<楽天2-1ヤクルト>◇20日◇Kスタ宮城

 不振に苦しむ主将が決めた。楽天鉄平外野手(28)が、仙台凱旋(がいせん)登板のヤクルト由規から決勝打を放った。1-1の同点で迎えた7回1死二塁、左越え適時二塁打を放ち、田中将大投手(22)の力投に応え「マーさん、いや田中さんがすごい投球をしていたので、点を取れれば勝てると思っていた」とお立ち台で話した。前日19日の焼き肉決起集会で結束したチームは連敗を止め、交流戦初勝利で4位に再浮上した。

 心の叫びは、もう聞こえない。7回1死二塁。それまでしつこく攻められたインハイ直球。真ん中に甘く入ってきた失投を、鉄平は見逃さなかった。「バットが自然と出た」。打球は左翼手の頭上を越え、勝ち越しの走者が生還。由規の「ズドーンとくるボール」に力負けせず、打ち返した。到達した二塁ベース上で、手に残った久々の感触の余韻にしばし浸った。

 内なる闘いがあった。内角攻めに、敏感になっている自分がいた。「原因が考えられるとしたら、昨年骨折してからかもしれません」。昨年の夏ごろから、足元への自打球や死球が集中して続いた時期があった。シーズンの終盤、右足小指に死球を受け、亀裂骨折した。故障離脱したまま、シーズンを終えた。

 打撃練習を再開したが、イメージ通りのスイングができない。向かってくるボールに「体がピクッといっていた」。内角球になると、その反応が顕著に表れた。頭では分かっていても、体が反応してしまう。ほんのわずかな動きの誤差が、繊細な鉄平の打撃を狂わせていた。今年の春季キャンプは「ここ何年かないほど練習した」。違和感を、練習量で補おうとした。

 修正は簡単ではなかった。震災の影響で地方を転々。打ち込み不足で課題を解消できないまま、開幕を迎えた。09年首位打者で2年連続3割ヒッター。経験と実績をもってしても、望んだ結果はついてこなかった。とことん、練習するしかない。悩んだ時はいつもそうして、壁を乗り越えてきた。前日19日は全体練習の後、居残り特打を行った。好調時の感覚に近づいていた。4回の2打席目には「狙った」というインハイ直球を、右翼フェンス手前まで運ぶ大飛球を放っていた。ポイントとタイミングが一致するのは時間の問題だった。

 内角球への踏み込みは鋭かった。「まだスイングが少し小さい。もうちょっと、という感じです」。長いシーズン、これからも闘いは続くが、完全復活の日はそう遠くない。困難に打ち勝つ-。今年は主将として、その姿勢を背中で見せ続ける。【柴田猛夫】