<巨人1-4ヤクルト>◇28日◇郡山
これでいいのだ!
ヤクルトの新人七条祐樹投手(26)が初登板初勝利を挙げた。巨人打線に対してボールを低めに集めて7回3安打、無四球の1失点でしのいだ。漫画「天才バカボン」の登場人物に似ているとの理由から愛称は「バカボン」。開幕前には右肩痛で離脱したが、満を持してのプロ初登板で、球団史上初の巨人戦での先発勝利。セ・リーグ首位チームに頼もしい右腕が加わった。
不思議な感情がわき起こり、目には熱いものがこみ上げてきた。1点リードで迎えた4回。七条は「緊張が取れて、周りが見えるようになって、ウルっときた」と涙が出てきた。
まだ試合は中盤だが、福島・郡山市の開成山球場には1万3945人が集まった。「たくさんのお客さんの中で投げられて幸せ。もしかしたらできないと思っていたので」。26歳のオールドルーキー。苦労続きの野球人生をかみしめた。
プロ初先発の相手が巨人。朝、目覚めたときから緊張が走った。「よく寝れましたけど、朝起きたらピークになりました」。言葉とは裏腹に、1回から飛ばす。1番坂本を、追い込んでから低めへの139キロ直球で見逃し三振に切る。2番亀井、3番長野と3者連続三振のスタートだ。
投じた7回106球中、140キロを超えたのは12球だけ。最速は144キロだが、直球は130キロ台後半が軸。その分「相川さんのミットだけを見た」と、低めに集め続けた。3ボールは8度あったが無四球。「1発があるし、ギリギリを狙って開き直った」。ヤクルトの新人が巨人から初先発初勝利を挙げるのは初。磨き続けた制球力で、プロ人生の第1歩を示した。
手にしたウイニングボールは「まずは嫁に。その後両親に渡したい」と言った。社会人では日産自動車九州の休部を経験し、昨年伯和ビクトリーズに移籍した。午前中はパチンコ店で働きながら、午後に練習。ホールには自らの愛称になった人気機種「CRバカボン」の音色が響いていた。
苦労した時代を支えたのが千春夫人だった。2月には長男直輝くんが誕生。「直球が輝くように」と命名した。開幕ローテーションを勝ち取った直後の3月24日の巨人戦で右肩を痛めて離脱した。愛息の抱っこも我慢して回復を目指した。「どんどん僕に似てくるんです」。戸田市内の新居から神宮まで、行きは首都高を使い帰りは一般道。「父ですから。無駄遣いはできない」と、高速料金700円を節約する庶民派だ。
由規、村中が脇腹痛で離脱する中、貴重な1勝を挙げた。小川監督は「落ち着いて、丁寧に投げてくれた」と目尻を下げた。ヒーローインタビューの最後は、七条自ら呼び掛けた。「自分もプロに憧れて、少年野球からやってきた。今度は自分が夢の選手になれるように頑張ります」。チリガミ王子が、福島のファンに誓った約束だ。【前田祐輔】



