<中日1-3阪神>◇7日◇ナゴヤドーム

 彦星さま、ありがと~。七夕の夜、鬼門でもがくトラに奇跡の星が降り注いだ。新4番マートンを据える大胆打線で臨んだが、延長10回までは息詰まる投手戦。ついに11回、難攻不落の守護神岩瀬を攻め立てると、相手がミス、ミス、ミスの天の川…。3連敗を免れた。たまにはこんな勝ちでもないとね。

 ゲームの空気がわずかに変わった。その瞬間を逃さなかった。両者一歩も譲らず、スコアレスの延長戦。11回、投手が先発吉見から岩瀬に変わった。通算セーブの日本記録をもち、この日が救援登板数の日本新記録だった左腕。難敵には変わりない。だが虎は突如として目覚めた。猛然と襲いかかった。

 先頭鳥谷が左越え、フェンスに達する二塁打だ。重苦しいムードが解き放たれた。ここで打席に向かったのが4番の新井貴浩内野手(34)-ではない。来日2年目にして初めて4番に指名されたマット・マートン外野手(29)だった。

 初球からバットを出した。内角に食い込んでくる直球にバットを合わせ、右前に落とした。二塁走者の鳥谷はいったん三塁で止まったが、返球を捕手小田が後逸。意外な形で両軍初の1点が記録された。

 無死一、三塁では6番に下がっていた「前4番」新井貴の投ゴロを岩瀬が二塁に悪送球。またも敵失で1点。さらに藤井彰の併殺崩れでもう1点。どれも格好のいい得点シーンではない。が、阪神ベンチの執念、そして危機感が絞り出した「3点」だった。

 「特別なことをするのではなく、アウトでも三塁に進めようと思った。1番でも4番でも気持ちやアプローチは同じ。変わるとすれば、ある打順に入れば巡ってくる状況が変わるということ。それに応じた打撃をするだけ」。マートンはこともなげに言った。

 2連敗を食らった前夜。チーム宿舎の食事会場でメッセンジャーらと深夜まで話し込んだマートンはホロ酔いで漏らした。「どうしてナゴヤでは勝てないんだろうな…」。阪神に移籍した昨年、同球場では2勝10敗と大苦戦。今年も2戦目まで2勝5敗1分け。6日の途中まで28イニング連続無得点と打線が金縛り状態。横浜との3試合で計26得点を奪い、完全復活したはずの打線が、だ。

 この日の昼間、ホテルの自室で整髪した。「蒸し暑かったからね」。メッセンジャーが携帯しているバリカンを借りて、自ら頭頂部を丸刈りふうに短く刈り込んだ。来日して“最短”の短さだ。横と後ろをメッセンジャーに整えてもらって完了。一味違った気分で球場入りした。もどかしさや何かを変えたい気持ちがあったのかもしれない。

 散々苦しめられてきたナゴヤドームで何かが変わった。いや、阪神ベンチが変えたのだ。そしてナインも意地を示した。この手応えが、阪神の大きな推進力になっていくはずだ。【柏原誠】