<巨人1-0広島>◇10日◇東京ドーム

 エースに予想外のアクシデントが発生した。広島前田健太投手(23)が巨人戦の6回裏を投げ終えた時点で緊急降板した。6回表の打席でファウルした際に右手が強くしびれたため。試合途中に病院で診察を受けた。第1打席の2回にもファウルで右手がしびれた。これが響いたのか、その裏にラミレスに決勝弾を浴びた。チームの大黒柱に暗雲が立ちこめた。

 エースの顔が激痛でゆがむ。1点を追う6回2死走者なし。巨人西村の投じた2球目シュートが容赦なく前田健の胸元を襲う。ファウルした瞬間だ。右手に強烈なしびれが走り、思わず何度も手を振る。凡退後、ベンチに戻っても、すぐにマウンドに行けない。壁に右手を押し当て、指をストレッチするなど痛みを消そうと必死になった。再び投球したが、6回裏を抑えるのが精いっぱいだった。

 試合途中に東京ドームを引き揚げ、向かった先は病院だった。打線は10安打を放ちながら拙攻の連続で無得点。重苦しい敗戦を見届けた野村監督も前田健について問われると「とてもいい投球だった。もったいない。病院に行っています」と明かした。球団関係者の証言では、大事を取って診察を受けたものと見られる。

 この日は最悪の巡り合わせだった。大野投手チーフコーチは「お互い、暗黙の了解があるけど、西村はそういう球(シュート)ばかり投げてきた。仕方ない。詰まって、手がしびれた」と振り返る。2回2死一、二塁の先制機で前田健に第1打席が回ってきた。責任感が強く、打撃も全力で取り組む男だ。初球の内角高めシュートをフルスイングした際にも、6回に先駆ける形で右手にしびれが生じていた。2回裏の投球練習前にはマウンドでも手を振るしぐさを見せた。指先の感覚が鈍ったのか、先頭ラミレスに細かい制球ができない。2球目だ。甘いスライダーをすくわれ、左中間に先制ソロ弾を浴びる。結果的にこの1点が決勝点になってしまった。

 この日は6回1失点で降板したが、昨季の負け数を上回る今季9敗目を喫してしまった。大野コーチは言う。「(6回裏に)投げたけど(前田健が)『あまり良くない』と言うので、判断して代えた。この試合だけではない。無理させるべきではない」。投手にとって手の感覚は生命線。シーズン終盤を見据えた緊急降板になった。【酒井俊作】