<阪神3-0ヤクルト>◇5日◇京セラドーム大阪

 風のないドームに神風が吹いた。阪神が首位ヤクルトに2連勝。クライマックスシリーズ(CS)圏内の3位巨人と3・5差に詰め寄った。しびれる投手戦に風穴を空けたのはアニキの執念だった。7回1死一、三塁。“二塁ゴロ”が前進守備の間を抜け、決勝打になった。ここぞで狙い通りの殊勲打だ。さあ、もっともっと勝ち続けろ!

 阪神金本知憲外野手(43)の心は決まっていた。「とにかくバットに当てて転がす」。フルカウントから、真ん中付近に137キロのシンカーが来た。少し体勢を崩されながらも、バットを押さえつけるように強く出す。一瞬凡打のようにも見えたが、実は本人の思惑通り。大きくワンバウンドしてそのまま狭い一、二塁間を抜けた。

 7回1死一、三塁。0-0の投手戦にピリオドを打つ値千金の決勝タイムリーだった。京セラドーム大阪に張り詰めていた緊張感を一気に解放した。一塁ベース上で思わず「よっしゃ」と声が出た。代走を送られベンチに下がった背番号6はうれしそうに歓喜のタッチを繰り返した。

 「あんまりいい当たりではなかったですけど。大和が三塁まで行ってくれて、彼は足が速いのでバットに当てれば点が入ると思って、当てにいきました」

 金本らしい仕事だった。1死一塁からブラゼルの代走大和がスタート。マートンが左前に打ちランエンドヒットが見事に決まった。一、三塁。犠飛でも内野ゴロでも1点を狙える状況が用意された。

 お立ち台で「何だかヤバいところで回ってきたなあと思った」と言ったのはもちろんジョーク。阪神1年目の03年、3番打者として優勝に導いたが、最も高く評価されたのはケース打撃。状況を読み、我欲を捨てて是が非でも得点につなげる。真骨頂だった。

 「今まで迷惑をかけてきた。少しでも取り返したい気持ちが今はある」

 昨年3月に痛めた右肩棘(きょく)上筋断裂は重傷だった。リードする右腕に力が入らず、左右の腕のバランスが崩れた。それでも試合を重ねながら少しずつ回復。ようやくイメージするスイングにあと1歩の段階まで上がってきた。

 「あれがもうひと伸びすればな。ちょっと伸びないんよな。統一球のせいか分からんけどなあ…」。9月23日の巨人戦(甲子園)で西村から中越えに三塁打。引っ張りの打球は力強さが戻っているが、開幕当初からセンターから左方向への打球がなかなか伸びず、苦しんだ。同29日のヤクルト戦(神宮)では同じように中堅左に大飛球(中飛)。手応えはシーズンを追うごとに増している。

 ヒーローインタビュー後。満面の笑みで引き揚げてきた。「あ~、1つ言い忘れた。3点目の新井のあれ(中前打)はピッチャーゴロや」。しっかり新井イジリも決めたアニキを中心に笑顔があふれた。虎は死んでいない。2連勝。敗れた3位巨人とは3・5ゲーム差だ。消えかけていた希望は、確かにまだ手の届くところにある。

 「まだ18試合ある。全然あきらめるゲーム差ではないので、1つでも上にいけるように頑張ります」。ファンに向けて誓った約束。どんなに険しくても、進むべき道は1つだ。【柏原誠】