阪神新井貴浩内野手(34)が今オフのFA権行使を視野に入れていることが24日、明らかになった。9月に2度目の権利を取得。残留、移籍については、この日の最終戦終了後に「白紙」を強調した。行使することで新たな契約を交わし、プレーに専念する狙いがあるようだ。虎の4番が野球人生の節目に重大な決断を下す。

 新井がこれまで何度も繰り返してきた言葉は、最終戦を終えても変わらなかった。

 「ゆっくり考えます。まだ何も考えてない」

 シーズン中は自身の進路について頭から排除してプレーに全力投球してきた。今日から始まるオフ期間を利用して自分と向き合う時間をつくる。

 来年1月で35歳になる。年齢的にベテランの域に入っていくことで2度目のFA権取得を野球人生の節目ととらえている。権利を行使すれば、阪神と再契約しても移籍を選んでも、4年間腰を落ち着かせてプレーできるメリットを感じているようだ。宣言せずに残留する選択肢も残している。

 初めて権利を取得した4年前は広島から阪神に移籍。それから4年間、阪神で主軸として活躍してきた。昨年途中からは、同じく広島から移籍した金本に代わって4番に座った。今季は労組プロ野球選手会の会長として、東日本大地震による開幕延期問題に取り組むかたわら、チームでは4番の重責も果たしてきた。

 最終戦では打点を上積みできなかったが、リーグトップの93打点で全日程を終えた。6打点差で追う2位の広島栗原がまだ1試合を残しているが、初の打点王の座は「当確」。個人タイトルは05年の本塁打王(43本)に続いて2つ目だ。

 阪神は来季の新監督に決まっている和田打撃コーチのもと、近日中に新体制で再スタートを切る。若手を鍛え上げる秋になる一方で、新井のFA問題は同じくFA権を取得した鳥谷やマートンの契約と並ぶ編成上の最重要課題になる。球団側はすでに主砲の慰留に全力を尽くす方針を明らかにしている。

 新井自身にもやり残したことがある。今は選手としての成熟期だが、試合後にポツリと発した「やっぱり優勝しないとね」という言葉がすべてを表わす。何よりもほしいのは「優勝」の2文字だ。今年は4番降格を味わうなど、V逸の責任も感じている。シーズンを終えても充足感はない。悔しさを胸に刻みながら、ベストの決断を導く。