<ヤクルト4-2巨人>◇27日◇神宮

 「雑草」が「エリート」に投げ勝った。「ヤクルトのライアン」こと、ドラフト2位小川泰弘投手(22)が、巨人のドラフト1位菅野智之投手(23)との「無敗ルーキー初対決」に勝利し、ハーラートップタイの3勝目を挙げた。菅野との対戦は大学1年以来、2度目。1学年下だが、好対照の道を歩んできたプロ同期生でありライバルとのプロ初対決で投げ勝った。先発右腕では今季初めて巨人から白星をマーク。チームも4連勝で3位に浮上した。

 ポーカーフェースの裏に、小川は熱い思いを秘めていた。幼少期からファンだった「巨人」と「菅野」が相手だと、いつもとは話が違った。「菅野投手が投げてくるのは分かっていたので、絶対に負けないという気持ちで投げました」。

 序盤こそ自分の投球を心がけることに努めた。だがライバルの投げる姿を見るうちに、勝ちたい思いがより強まった。「(菅野が)いい投球をしてましたし中盤以降は投げ勝ちたいと思っていました」と燃えた。巨人打線にもひるまず直球主体で挑んだ。5回2死一、三塁では“打者”菅野を140キロ直球で右邪飛。6回に坂本に2ランを浴びたが、その裏に逆転した。菅野は6回で降板し、7回2失点で投げ勝った。「1球1球、悔いのないボールを投げようと思った。チームの勝利に貢献できて良かった」と、ようやく笑った。

 同じルーキーながら、学年は1年下。それでも好対照な道を歩んできた。菅野は巨人原監督のおいという「サラブレッド」だが、両親は野球経験なし。高校と大学は私学の強豪校の菅野に対し、21世紀枠で甲子園に出たものの愛知の県立高校出身。日の当たる場所にいたエリートに対し、目立たぬところで努力を重ねてきた雑草といえるだろう。

 そんな2人の運命は、09年10月29日に初めて交わった。創価大1年の09年10月29日、関東地区大学選手権準決勝で対戦。小川は9回5安打完封で、7回8安打5失点の菅野に投げ勝った。「その時から剛腕って感じですごく速くて、スライダーも切れてました」。その後、大学3年夏に「ライアン投法」をものにした。

 初対決から1276日。「ライアン小川」となって迎えた2度目のマウンドで、エリートでない険しい道を歩んで身につけた「対応力」を発揮した。強風でも足を高く上げる独特のフォームを維持すべく、体が前に流れないようタメを作った。ほとんど捕手のサイン通りに投げてきたが、この日は1度だけ首を振った。今あるすべてを出し切り、黄金ルーキーに初黒星をつけ「試行錯誤しながら投げられたのは自信になる」と手応えをつかんだ。

 無傷の3連勝で、チームも4連勝。それでも納得せずに言った。「戦いは続きますし、(プロ生活は)まだ始まったばかり。すぐ切り替えてやっていきたい」。ライアンVS菅野。これから何度も好勝負が繰り広げられそうな予感がする。【浜本卓也】

 ▼小川と菅野の新人対決は小川に軍配。開幕直後の4月中に新人が先発で投げ合うのは、08年4月26日大場(ソフトバンク)-唐川(ロッテ)以来、5年ぶりだった。これで小川は菅野らに並びリーグトップタイの3勝目。ヤクルトの新人で4月中に3勝は、62年渋谷(3勝1敗)69年藤原(3勝0敗)に次いで44年ぶり3人目。藤原は先発2勝、救援1勝で、4月中に先発で3勝は渋谷に次いでチーム2人目だ。