<日本ハム2-5楽天>◇8日◇札幌ドーム

 子どもたちのヒーローは、約束を守らなくてはいけない。どんなに時代が変わっても、変わらない鉄則を楽天田中将大投手(24)が果たした。日本ハムを7回4安打2失点に抑え、無傷で両リーグ単独トップの5勝目。チームに勝率5割復帰と3位浮上をもたらし「とにかく勝つことが出来て良かったです」と言った。4回まではパーフェクト。7回にアブレイユに2ランを打たれたが、最速152キロの直球が走った。「今季一番の球がいった」と納得の出来だった。

 田中の約束-。5月5日のこどもの日だった。Kスタ宮城でオリックス戦に登板しない田中は、試合前に球場前広場でトークショーに出演した。マー君の登場で、集まった子どもたちは大興奮。その時点でチームは借金3と苦しんでいたが、「なんとか大型連勝したい。僕は勝ち続けるしかない」と宣言した。チームの連勝を4に伸ばし、約束を守った。

 田中にも子どもの頃、憧れで見ていた選手がいた。兵庫・伊丹で育った少年時代。テレビで巨人戦の中継をよく見た。「イコール、松井さんのホームラン。魅力でしたね」。子どもたちに「連勝」を約束した同じ日、東京ドームでは、その松井秀喜氏が引退セレモニーに臨んだ。田中は「1つの時代が終わったという感じ」と漏らした。

 そう話す田中が、今は憧れを受ける側になった。球団も、リーグも違うが、ヒーローの系譜を引き継いでいる。そのヒーローは、勝ってもニコリともしなかった。アブレイユの1発に「ホームランは最悪」と悔やんだ。今季は開幕から本調子ではなかったが「勝てばいい」と言い続けてきた。この日は「気持ち良く勝って終わるより、こういうこと(被本塁打)があったので、次に向けて良い教訓にしたい」と内容を重くみた。己に厳しいのは、ヒーローが本来の姿に戻った証拠だった。【古川真弥】

 ▼田中が両リーグトップの5勝目を挙げた。開幕から無傷の5連勝は、7連勝した09年以来2度目だ。これで田中はプロ通算80勝目。ドラフト制後、高校から入団して7年目以内に80勝到達は、11年ダルビッシュ(日本ハム)以来10人目になる。7年目終了時にダルビッシュは93勝、松坂は91勝をマークしたが、今季の田中はあと何勝上乗せできるか。