<ヤクルト1-9広島>◇25日◇神宮

 初づくしのヒーローだ!

 広島鈴木誠也内野手(20)がプロ1号を含む4安打2打点と打ちまくった。1回先頭で打席に立ち、ヤクルト石川の初球を右翼スタンドにぶち込んだ。セ・リーグの日本人選手のプロ1号が初球先頭打者本塁打というケースは、鈴木誠が初。初ものづくしの背番号51がチームを15安打9得点の大勝に導いた。

 打線に火をつけたのは20歳の“珍記録”だ。雨が降りしきる午後6時の試合開始直後。1番鈴木誠がヤクルト石川の高めの直球に食らいつき、右翼席に運んだ。初回、初球をつかまえるプレーボール弾。これだけでも珍しいが、プロ2年目の鈴木誠にとって、これがプロ1号。初ずくめの一撃はセ・リーグの日本人選手では、これまた初の快挙だった。

 「代打のような気持ちで、初球から振る準備はしていました。まさか入るとは…。若さを出して思い切っていった。あまり覚えてないです(笑い)」

 若鯉の闘志は、すぐさまナインに伝わった。その後は3番丸が左中間へ適時二塁打を放ち、5番梵も右中間に2点適時三塁打。打者一巡の攻撃で初回だけで4得点と主導権を握った。

 背番号51はこれで終わらなかった。2回には遊撃へのゴロをヘッドスライディングで内野安打にすると、6回には左翼線に適時二塁打。三塁打が出れば…という7回には、またも左中間二塁打でサイクル安打はならず。「考えもしなかった」と苦笑いだが、1試合4安打は、これまたプロ初の経験だった。約1カ月ぶりにスタメン起用した野村監督も、孝行息子に「いい働きをしてくれた」と目尻を下げた。

 プロ1年目の昨季は期待されてシーズン終盤に1軍昇格したが、出場11試合でわずか1安打だった。今季も勝負どころの8月に1軍に呼ばれ「同じ失敗をしたくない」と必死に食らいついている。試合後には関係者からホームランボールを受け取り、ニヤリ。「両親に贈ります」と大事そうにユニホームのポケットに入れた。若手が次々に台頭するカープ。新たなヒーロー誕生の予感がする。【桝井聡】

 ▼鈴木誠が初回先頭打者本塁打。鈴木誠はこれがプロ1号。外国人選手を除き、プロ初本塁打が初回先頭打者アーチは12年宮崎(オリックス)以来プロ野球28人目。セ・リーグでは08年赤松(広島)以来6年ぶり10人目で、10人のうち初球を打ったのは鈴木誠が初めて。