カネやんがほれた!

 巨人のドラフト2位戸根千明投手(22=日大)が6日、OBで400勝左腕の金田正一氏(81)が見守る前でブルペン入りした。力ある直球を低めに集めアピールし、金田氏から「面白いな、この投手」と評された。原監督ら首脳陣の評価も上昇中で、層が厚い投手陣の中、開幕1軍の競争にルーキーが割って入ってきた。

 拍手の音が、心地良かった。戸根がブルペンで47球を投げ終えると、後方で椅子に座って見ていた金田氏が手をたたいた。今村、松本竜という若手左腕が3人並んだブルペン投球。重量感ある速球を低めに集めた戸根が、400勝投手の視線をくぎ付けにした。

 金田氏は報道陣から印象に残る投手を問われると「体の大きい子だね。面白い。どこに放っても腕を振ってくるから、打者は打ちづらいと思う」。173センチの戸根は、並んで投げた3人の中で一番背が低い。だが、金田氏の中では「体が大きい」という印象が残っていた。投球前、原監督に連れられて金田氏にあいさつへ行ったところ「大きいな」と、厚い胸板をパンチされていた。

 大投手の前で緊張していた戸根は、金田氏の評価を伝え聞くと「うれしかったです」とホッとした表情を浮かべた。同じ左腕投手として「究極の目標です。真っすぐが消えると聞いたことがあります。金田さんのような投手になりたい」と、大きな目標を口にした。

 173センチ、93キロの恵まれた体格から、顔が下を向くほど思い切り腕を振る投球フォームで、球威は群を抜く。斎藤投手コーチからも「一番いいところは馬力」と評されている。加えて研究熱心で、ソフトバンク五十嵐の高速クイック、通称「スーパークイック」を参考にしている。「タイミングを外せれば直球が2種類になる」と投球ごとに右足の上げる速度を変えることで打者を惑わす。そんな頭脳的な一面も魅力だ。

 内海、杉内、山口と、軸となる左腕はいる。だが、その次が育っていない。戸根が金田氏に評価されたことに、原監督は「あれだけの成績を残している方がおっしゃるんだから、ビビッとくることが分かるんじゃないか」と感謝していた。もちろん原監督も、戸根の存在を楽しみにしており「体が強そう。1軍に入ってきたら面白くなりますね」と期待感を口にした。大先輩からの高い評価が、新たなサウスポーが躍動する契機になるかもしれない。【浜本卓也】<戸根千明という男>

 ◆経歴

 1992年(平4)10月17日、京都・京田辺市生まれ。石見智翠館(島根)から日大を経て、14年ドラフト2位で入団。

 ◆監督もほれた

 昨年ドラフト前日のスカウト会議で、原監督が映像をチェック。「大いに目立った」と上位指名を進言した。

 ◆サイズ

 身長173センチ、体重93キロ。足のサイズは28センチ。胸囲115センチ、背筋力は約300キロ。50メートル走は6秒0。「僕は動けるデブになる」と宣言。

 ◆球種

 直球の最速は148キロ。チェンジアップ、スライダー、スラーブ、カットボール。

 ◆食欲

 回転ずしは最高で64皿、焼き肉なら25人前を平らげる。

 ◆ブーム

 新人合同自主トレ期間中のオフは、午前6時半に寮を出発し、喫茶店でゆっくり。「都会の空気を吸うのが好き」。