俳優香川照之(44)らが出演し2005年(平17)9月に完成後、映画会社の倒産により公開が見送られた幻の映画「オボエテイル」(芳田秀明、明石知幸、久保朝洋監督)が、5年の時を経て来年1月8日から東京と横浜で公開されることが決まった。35ミリフィルムなど映画の素材自体が紛失し、公開が絶望視されたが、今年に入り都内の倉庫でオリジナルフィルムが発見されて公開にこぎ着けた。

 「オボエテイル」は05年6月に岩手県盛岡市でロケが行われ、同9月に完成した。同市在住の直木賞作家高橋克彦氏の短編集を原作に、記憶をテーマにした3話構成のオムニバス・ミステリーで、第3話の「緋い記憶」に主演した香川のほか、第1話「遠い記憶」に村上淳と麻生祐未、第2話「前世の記憶」に葛山信吾ら実力派俳優が出演した。

 ところが同10月中旬の「第9回みちのく国際ミステリー映画祭2005in盛岡」で招待作品として上映後、映画会社が倒産。その混乱の中で35ミリフィルム、宣伝用の写真などすべての素材が行方不明となり、劇場公開が不可能となった。

 それが今年に入り、都内の現像所「イマジカ」にオリジナルフィルムが残っていたことが判明。DVD化の話が先行したが10月23、24日の「もりおか映画祭」に招待上映され劇場公開の機運が高まった。第2話担当の明石監督が、宣伝費などを自腹で支払い公開が決まった。同監督は「幸い5年間、たるの中に寝かされていい感じに熟成されたように思います。劇場公開が、自分たちの中ではけじめにできるのがうれしい」と感激した。

 香川は古い住宅地図に「空き家」と記された場所に住んでいた美しい少女との記憶を追う山野良彦を演じる。香川の少年時代を俳優柄本明の次男で、当時デビュー2年目の時生が演じる。劇場公開は新宿K,s

 cinemaと横浜ニューテアトルで、1月8日から2週間程度を予定。DVDは同21日に発売される。