仲村トオル、優作さんほうふつさせる存在感/2009年10月16日付
作家志水辰夫氏(72)のベストセラー小説「行きずりの街」(阪本順治監督)が映画化されることが10月15日、分かった。来年俳優デビュー25周年を迎える仲村トオル(44)が主演する。製作はデビュー作「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズを手掛けたプロダクション。恩返しを誓いながら、葛藤(かっとう)に苦しむ主人公に挑む。小西真奈美(30)がヒロインを演じる。東映配給で来秋公開。
小説「行きずりの街」(新潮文庫)は90年に発表され、91年の「このミステリーがすごい!」第1位に選出された恋愛ミステリーの傑作。売り上げ66万部を記録した。ハードボイルドタッチの展開にラブストーリーが絶妙のバランスで融合したドラマ性に強くひかれた東映とセントラル・アーツが映画化に乗り出した。
主演に指名された仲村は、大学在学中にオーディションで主演に抜てきされた85年映画「ビー・バップ・ハイスクール」でデビュー。同映画の製作プロダクションはセ社、配給は東映だった。5作続いた同映画シリーズで人気を獲得。セ社が制作に携わったテレビ、映画の人気シリーズ「あぶない刑事」でも個性を発揮。仲村はセ社を「僕にとって実家のようなところ」と愛着を語る。「ド素人だった僕はこの人たちに許してもらい、ごまかしてもらいながら何とか仕事を続けられた。だから今、生き延びていられると実感してる」と話す。
セ社にはかつて松田優作さんも所属。仲村は優作さんから弟のようにかわいがられた。セ社の黒沢満社長は仲村の起用について「機は熟した。最近は主演の相手役なども務め、演技力も目を見張る。優作さんをほうふつとさせる存在感もある」。仲村のデビュー時を知るスタッフも参加した撮影は先月開始。阪本監督は「自然体の演技の中に心のひだをしっかりと端的に表現できる男」と絶賛している。
俳優生活25周年の節目と映画公開が偶然にも重なった。主人公は過去を背負いながら、再び愛を取り戻そうと徐々に心を変化させていく難役。仲村は「もうガキじゃないんだぞという緊張感もありますが、質の高い仕事をすることが恩返しになるとも思う」と話した。
[2009年10月16日付]