美由紀さん「私が力づけられた」/1989年11月10日付
故松田優作さん(享年39)の告別式から一夜明けた9日、夫人の美由紀さん(28)が東京・杉並区善福寺の自宅で取材に応じ、勇気を持ってがんと闘った生前の松田さんについて語った。
美由紀さんは、松田さんのがんについて「こんなにひどいと分かったのは最近でした」と言う。松田さん自身は最後の最後までしっかりしており「私がすぐメソメソし、本当にさみしくてつい甘えるものですから、“くだらないことは考えるな”と逆に怒られ、力づけられました」。
やつれきった表情で一言一言をかみしめるように語った美由紀さんだが、最後は「主人は私がこういう場に出るのは好きじゃなかったのですが、ファンの方々にありがとう、と伝えたかった。優作はたくさんの映画を残し、これからも長く生きております」と自分で再度確認するかのような言葉でしめくくった。
また、8日TBSで放送された代表作「家族ゲーム」(森田芳光監督)は22.5%(ビデオ・リサーチ調べ)の高視聴率を記録。遺作となった映画「ブラック・レイン」も客足が伸びている。東京・新宿スカラ座では、一日300人だった入りが、9日は1300人に。同館では、今週末にも「松田さんのあまりにも若い死を悼み、哀悼の意を表します」の内容の看板を新たに出す。
死を悼む声はいまだやまず、最後の仕事、日本テレビ「華麗なる追跡」で共演したフロレンス・G・ジョイナーから美由紀さんあてに弔電が届いた。文学座の同期にあたる阿川泰子は12日に追悼再放送する「オシャレ30・30」(8月20日放送分)再編集部分で「優作はがんのことを知っていて、お別れに来てくれたのね」と涙ながらに語った。
[1989年11月10日付]