<フィッシング・ルポ>

 大荒れの東京湾で大逆転初Vだ!

 「2011日刊スポーツ・フィッシング・サーキット」船釣りブロック・マダイ部門の東京湾・神奈川地区大会が25日、久里浜「大正丸」を本部に川崎「つり幸」、金沢八景「太田屋」で計38人が参加して行われた。強風に吹き荒れる中、全体で43匹の釣果があがり、競技終了50分前に4.35キロを釣り上げた円谷友久さん(60=神奈川県逗子市)が初制覇した。実は“ある約束”が釣らせたビッグヒットだった。

 円谷さんは焦っていた。競技の残り時間は1時間を切っていた。左隣の前田茂夫さん(62=八王子市)は1・75キロ(51センチ)を含めて3匹を釣っていた。右隣の奥津茂さん(47=横浜市)も30分ほど前に3・4キロ(63センチ)の大物を釣り上げていた。そこにサオが弓なりに曲がった。強烈なアタリだ。2時間前、慌てて合わせてハリスを切られていた。ゆっくり巻き上げた。浮いてきたのは4・35キロ(70センチ)の堂々たる優勝魚だった。

 大会では、参加3船の各1位で上位3位を決する「横取り方式」が採用される。順位は目まぐるしく変わっていた。スタートした午前8時過ぎに太田屋(太田一也船長=43)の涌井満さん(67=川崎市)が3・4キロを釣り上げた。同9時ごろに大正丸(鈴木喜忠船長=38)の小川与四郎さん(68=横浜市)が3・7キロでトップに立った。つり幸(幸田一夫船長=61)では同10時20分、中村正夫さん(63=川崎市)が2・75キロ、そして同11時30分、太田屋で北原俊之さん(42=横浜市)は3・6キロと続々と大物を仕留めていった。

 周囲が次々に釣り上げる中、円谷さんは絶対に釣らなくてはいけない約束があった。かわいがっている姪(めい)が初めて出産を控えていた。「出産祝いにマダイを絶対釣ってくるからな」。昨大会は初参加で1・1キロを釣って9位だった。「どんなに小さくてもいいからマダイを釣って、赤ん坊と一緒に写真を撮ると必死だった」と円谷さんは慎重にリールを巻いた心境を振り返った。

 大逆転の初優勝。マダイ釣りを大正丸で始めて12年になる。「こんなに大きいマダイは初めて。しかも大会で釣れるなんてね。ヨシ君(船長)の指示ダナの海面から40メートルを守ったから釣れた。ヨシ君に感謝だ」と鈴木船長に頭を下げ「来年も出る。またいい釣りをさせてもらいたい」とトロフィーを握って控えめに連覇を誓った。【寺沢卓】

 ▼今後の釣況

 昨年、数釣りで活況だった久里浜沖だが、今年も引き続き好釣だ。鈴木船長は「マダイの魚影は濃いですね。1キロ前後の食べたらおいしいサイズが釣れてる」と笑顔で話す。現在、潮温は16・5度。「今、水深50メートル前後のポイントがいい。風が強いから、海が荒れている日が多い。もう少し潮温があがると、水深45メートルぐらいの場所に釣り場が移るから、海面から35メートル前後の浅場で勝負できる。ナギになってくれば、大型も釣れるようになりますよ」と分析した。