自民党の小泉進次郎農林部会長(35)は25日、農業改革に向けて進めてきた「農業競争力強化プログラム」が党で了承されたのを受けて取材に応じ、「のむところはのんだが、譲れないところは譲らなかった。自分なりに振り返ると、『負けて勝つ』の思いだ」と、述べた。

 政府の規制改革推進会議が今月、JA全農の改革案に関し、1年以内の組織刷新など急進的な提言案を打ち出した。進次郎氏は党内で調整に当たってきたが、JA全農の激しい抵抗に遭遇。結局、年限は切らずに、JA全農に事業見直しなどの数値目標を盛り込んだ年次計画を策定させることで折り合う形になった。

 100%は攻めきれず、最終的に落としどころを見つける形になったことを念頭に、「負けて勝つ」という表現に落とし込んだ。報道陣に、「失速したとの評価もあるが」と指摘されると、「すべての評価は受け止めるが、(自身が率いる)プロジェクトチームが始動する前と今では、今まで登ることがなかった山に足を踏み入れたと思う」と、反論した。

 昨年10月、専門外だった農林部会長に抜てきされ、約1年にわたり、農政や農業改革に向けたプランづくりに取り組んできた。しかし今月に入り、JA全農の改革をめぐって、政府と農業団体との間で、板挟みの状態になっていた。

 やや充血した目で、「私なりにさまざま苦しんだことは事実だ。昨日(24日)の夜は、もうこの山を登れないと思った瞬間もあった」と話した。「団体側との協議で、ここを抜かれたら、マスコミに『骨抜き』と言われても仕方ないところを、抜かれかかった。すべて失う瀬戸際までいった」と、「抵抗勢力」との攻防戦の舞台裏も明かした。

 その上で、「向かうべき方向性は見えた、何を具体的にどう改革するか、今までは決められなかったところ、残りの期間で年次計画を立て、数値目標を出して、しっかりフォローアップしていくことが明確化されたのは、大きな前進だ」と強調。JA全農サイドに、強く自己改革を求めた「6行分の文言」を文書に入れるにこだわり、そこを勝ち取ったと主張。「骨抜きにはなっていないか」との指摘には、「なっていません」と反論した。

 「いわゆる抵抗勢力がどんな手法を使うか、政治の戦場とは何かがよく分かった」とも述べた。「農業団体のみなさんが言う『自己改革』が、真の改革にならなかった時、1つのステージが来る。来るか来ないかは、まさに自己改革にかかっている」と、けん制するひと幕もあった。

 自身との対立が指摘された党内のベテラン農林族議員については、「最後に守ってくれたのは、農林族の先輩方だった」と打ち明けた。