第156回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は山下澄人さん(50)の「しんせかい」(新潮7月号)、直木賞は恩田陸さん(52)の「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎)に、それぞれ決まった。

 芥川賞を受賞した山下さんは高校卒業後、脚本家の倉本聡さんの「富良野塾」2期生になった。受賞作も、富良野塾での経験をモデルにした自伝的小説で、現在は劇団「FICTION」を主宰している。

 受賞会見に、黒の革ジャン姿で現れた山下さん。倉本さんに、どう報告するかと問われると、「すいませんという感じ。留守電には(受賞報告を)入れたが、(作品の)題字まで書いていただいた。ありがとうございます(という思い)しかないですね」と、感謝の気持ちを述べた。

 この日は東京・六本木の「おしゃれなカフェ」で、発表を待っていたという。受賞報告の瞬間を「担当の編集者といたが、担当の方が緊張していた。自分も『すみません』という準備はしていたが」と、振り返った。

 大勢の報道陣を前に「すごいな。芥川賞」と照れくさそうにつぶやき、受賞の感想を「痛快」と述べるなど、独特の感情表現を連発。一方で「正直ほっとしている」と本音を吐露した。

 過去に3回芥川賞候補になり、今回は4度目の挑戦だった。「これでもう、候補にしてもらって連絡を待つことがなくていい。今日も僕以外に(芥川賞候補になった)4人の方がそういう時間を過ごしていたと思う。(賞を)もらえたら、みんなが喜んでくれるという思いもある。(他候補の気持ちを)お察しします。お疲れさまでしたという感じ」と、今回落選した他の候補者の心境を代弁するひと幕もあった。

 続いて会見した恩田さんも、「山下さんのセリフではないが、本当にホッとした」と、笑顔をみせた。

 贈呈式は2月下旬、東京都内のホテルで開かれる。賞金は各100万円。