日刊スポーツ写真部では昨年の2015年4月、空撮による写真企画や動画企画ができないかという目的でドローン購入を提案し、編集局から承認を得ました。機種はDJI社の「ファントム3」(定価18万5800円)です。

日刊スポーツ写真部に届いたドローンの「ファントム3」。白い箱がおしゃれに見える
日刊スポーツ写真部に届いたドローンの「ファントム3」。白い箱がおしゃれに見える

 今ほど「ドローン」は問題視されていませんでしたが、その安全面など配慮する必要がありました。まず、写真部長が会社としての運用規定を明確に定め、保険もきちんと加入しました。操縦者は安全講習と習熟訓練を実施した上で、「ドローン取材者」と認定。健康上の不適格、安全管理上の違反があった場合は許可を取り消すこととし、機体の定期点検、雨や強風などの悪天候下では飛行させないなど、取り決めは細かく設定しました。

「ファントム3」の専用アルミケース。男心をくすぐる形状で格好いい
「ファントム3」の専用アルミケース。男心をくすぐる形状で格好いい

 さあ、いよいよ購入です。6月16日、大きな白い箱に入った「ファントム3」が写真部に届きました。専用のアルミケース(1万6200円)は正直、男心をくすぐる形状でした。わくわくして箱を開けたのを覚えています。ところが、一筋縄ではいきませんでした。

「ファントム3」の専用アルミケースに収納したドローンの機体(中央)。右側は操縦機と2個のバッテリー
「ファントム3」の専用アルミケースに収納したドローンの機体(中央)。右側は操縦機と2個のバッテリー

 まず、説明書がとにかく薄いのです。アップル社製品と同じで、日本の家電製品のような懇切丁寧な説明がないのです。写真部が誇る東大卒のアルバイトK君にも説明書を解読してもらいましたが、まず、プロペラすら回らないのです。ネットでも色々な情報を見つけ、システム室のK部員にも応援に来てもらいました。というのも、ドローンを飛ばすのにスマホが必要だったのです。日刊スポーツでは社員にスマホを貸与していますが、型が古くドローンと連動しませんでした。かれこれ数時間、格闘した結果、機体のコンパスを正しく作動させるための調整(コンパスキャリブレーション)をやらずしてプロペラは回らないことが分かり、水平方向と垂直方向のキャリブレーションに何とか成功。安全のためプロペラは外していましたが、無事、4つあるプロペラの軸棒が回り出しました。とりあえず、ここまで動いたことに大満足し、第1回「ドローンを飛ばす会」(自主開催)は閉会したのですが、ここから、しばらく暗黒の時代に突入しました。


日刊スポーツ写真部が購入したドローン「ファントム3」。この物体がいつ飛ぶのか待ち遠しい
日刊スポーツ写真部が購入したドローン「ファントム3」。この物体がいつ飛ぶのか待ち遠しい

 2015年4月22日、東京千代田区永田町の首相官邸の屋上に落下したドローンが見つかりました。機体には放射線を示すマークの容器が付き、セシウムが検出されました。翌日には、米ワシントンのホワイトハウス敷地内でドローンが墜落していたことが報じられ、日本政府が小型無人機に関する運用ルールの検討を決定しました。また、同年5月9日には長野市の善光寺境内でドローンが落下し、飛ばした15歳の少年は、長野県警から口頭で注意を受けました。2日後には法務省が全国の刑務所に注意報を発令し、ドローンを使っての違法薬物、逃走用の道具、武器などの差し入れの警備強化と、盗撮についての注意も呼び掛けました。

 7月8日には衆院内閣委員会が飛行規制法案の修正案を可決し、首相官邸、国会、最高裁や皇居などの重要施設と、それぞれの施設の境界線から外側300メートルを「周辺地域」とし、いずれの上空も飛行禁止区域とし、違反者には1年以下の懲役か50万円以下の罰金を科せられることになりました。さらには9月2日、何とプロ野球の阪神ゴメスが試合前の練習中にドローンを飛ばし、甲子園の右翼フェンスに直撃させ、口頭による厳重注意を受けました。その後も、9月にはドローンが姫路城に激突、10月には広島で新幹線線路脇に落下する事故もありました。

 このように「ドローン」に関する環境が激変し、我々のプロペラしか回っていないドローンも飛行機会どころか、ケースから出される機会も失い、状況を見守るしかなくなっていました。

第2回「ドローンを飛ばす会」で機体(右)と操縦機を手にする日刊スポーツのスタッフ。スマホにドローンからの映像が映し出されている
第2回「ドローンを飛ばす会」で機体(右)と操縦機を手にする日刊スポーツのスタッフ。スマホにドローンからの映像が映し出されている

 そして、年は明け、2016年。気持ちも新たに、眠っていた日刊「ドローン1号」を再びケースから取り出し、第2回「ドローンを飛ばす会」を開催しました。今回は「ドローン空撮入門 ファントム3飛ばし方&設定 完全攻略」(インプレス=2000円)というバイブルも購入。さらには昨年秋に個人貸与のスマホが「エクスペリアZ3」に代わったこともあり、まずは専用アプリの「DJI GO」をインストール。その後、満を持して操縦機に接続したのですが、またしても設定がうまくいかず、システム室のK部員に来てもらい、数十分で問題を解決。無事、カメラからの映像がスマホに映し出され、写真、ならびに動画のテスト撮影に成功しました。


初めてプロペラを装着し、外階段の踊り場へ。ドローンを傾けると水平を保とうとし、4つのプロペラが速度を調節。その強さに日刊スポーツのスタッフも驚きの表情を見せる
初めてプロペラを装着し、外階段の踊り場へ。ドローンを傾けると水平を保とうとし、4つのプロペラが速度を調節。その強さに日刊スポーツのスタッフも驚きの表情を見せる

 ドローンにプロペラを付け、安全確保のため会社の外階段踊り場に出て、手には持ったままでしたが電源を入れると、けたたましい音とともにプロペラが回転。ドローンを傾けてみると、水平を保とうと4つのプロペラが速度を調節する動きも確認。かなり力強い推進力を肌で感じ、思わず歓声を上げずにはいられませんでした。

 今後はドローンの販売並びに各種サポートをする「株式会社セキド」が開催する講習会にも参加予定。日刊スポーツ初のドローン映像を皆さんにお届けできるのを楽しみに、取り組んでまいりたいと思います。どうぞお楽しみに。【写真部・鹿野芳博】