「水の都」として名高い世界遺産のイタリア北部ベネチアで25日、増え続ける観光客を抑制するため、日帰り客からの入場料5ユーロ(約830円)の試験的な徴収が始まった。今年は混雑が予想される連休や週末など7月までの計29日間に導入される。

入場料の適用は主に旧市街で、午前8時半~午後4時までの訪問が対象。料金の支払いは事前にインターネットでQRコードを取得する方法のほか、到着後に市内の案内所などでも可能。1日当たりの入場者数に制限はない。14歳未満や宿泊客などは免除となる。

25日はイタリアの祝日で、朝から大勢の人でにぎわった。サンタルチア駅などの主要地点には監視員が配置され、支払いの有無をチェックした。違反した場合は50~300ユーロの罰金が科される可能性があるという。

イタリア北部トリノから来たアレシアさん(30)は到着後、係員から説明を聞いて料金を払った。「仕事で訪れる機会が多く、自分が対象になるか分からなかった」と困惑した様子。北部ボローニャから訪れたパオロさん(54)は「ベネチアは他に類を見ない街だ。どんなに入場料が高くなっても観光客は来るよ」と抑止効果に疑問を呈した。

ベネチアでは観光客が押し寄せて住民生活が害される「オーバーツーリズム」が深刻化。かつては10万人を超えていた市中心部の人口は年々減少し、現在は5万人を切った。観光客向け宿泊ベッド数が住民の数を上回っている状況だ。住宅環境の改善を求める市民団体「オチオ・ベネチア」は25日、「入場料の導入よりも、宿泊客数の規制をすべきだ」と訴えた。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)は昨年7月、ベネチアを存続が危ぶまれる「危機遺産」に指定するよう勧告。最終的に指定は見送られたが、対策が急務となっている。(共同)