◇2004年アテネ大会競泳男子100メートル平泳ぎ決勝(8月15日・水泳センター)1位=北島康介(日本)1分0秒08、2位=ハンセン(米国)1分0秒25、3位=デュポス(フランス)1分0秒88

 50メートルの折り返しは、28秒26の2位。世界記録を持つライバルのハンセンに0秒04差でピタリとつき、プレッシャーをかけた。浮き上がりで前に出ると、大きな泳ぎで差を広げる。最後まで泳ぎは崩れず、0秒17差で優勝。競泳男子では88年ソウルの鈴木大地以来となる金メダルに輝き、3日後の200メートルでは圧勝で2冠を獲得した。

 レース直後のインタビューで口をついて出た「チョー気持ちいい ! 」。この年の新語・流行語大賞では、五輪初の年間大賞に輝いた。本人は「泣くことに対しての照れ隠しだった」と明かしている。直前の故障で抱えた不安、ライバルの好調ぶりに、師の平井コーチですら「ダメかも」と漏らしていた。ギリギリの状態からの奇跡のV。一言に北島の思いが詰まっていた。(2014年12月17日東京本社版掲載)