今大会初採用のスノーボード・ビッグエア。飛んで(×9)回って回って回って回る~。円広志の歌(古い!)を頭の中に思い浮かべながら、予選を見た。トップ選手は確実に勝ち上がりを狙って大技を封印。その中で日本勢3人が12人による決勝に進んだ。藤森2位、岩渕3位、鬼塚7位、メダルの期待も高まる。

 「オリンピックって、運ですよ」。平昌出発前、藤森は言った。スノーボードクロスで3回、種目を変えて4回目の五輪に臨む31歳は「競技人生の集大成」の最後の五輪に向けて、笑っていた。少しでも風が吹いたり、雪面がわずかでも乱れていたり、小さなことで4年間の苦労はすべて吹き飛ぶ。「自分じゃどうしようもないですから」。美人ボーダーは、達観したように言うと再び笑った。

 今大会は風のいたずらがすぎる。藤森らが挑んだスロープスタイルは予選が中止になり決勝一発勝負だった。不安定な風の影響を受けた鬼塚は19位。「オリンピック、あまり好きじゃない」という言葉が、心に刺さった。競技の中止や延期だけでなく、試合中の強風でも泣き笑いが起きる。

 「強い選手は風があっても強い」「風の影響は全選手が同じ」は確かだが、さすがに雪煙の中での競技は選手がかわいそう。背後に発電用の風車が見えるたびに「風の強さをアピールするな」とツッコミたくもなる。と同時に、2年後の東京も不安になってくる。

 7月末から8月の酷暑の中で行われる東京大会は、暑さとの戦い。ゲリラ豪雨など悪天候も心配になる。「こんなところで大会をやるなよ」という選手たちの声が聞こえるよう。選手から「好きじゃない」と言われないように、万全の対策(何をどうすればいいのか難しいが)が必要だ。選手を第一に考えるのが、開催都市の責任でもある。

 藤森は19歳で初出場した06年トリノ大会で7位に入賞したが、期待された10年バンクーバーは公式練習中に突風で転倒して本番を棄権、14年ソチ五輪も準々決勝で転倒した。「五輪には運がないね」と言うと首を振って笑った。「4回も出るんですよ。私、意外と運持ってるんです」。努力で培った運は実力。決勝は23日、藤森の持つ「運」に期待したい。【荻島弘一】