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玉乃光に合う肴

スティック土佐風味 ふきのとう紅白田楽<建仁寺・祇園丸山>

祇園丸山店主 丸山嘉桜さん 祇園南に京都五山第3位の名刹・建仁寺が建つ。その南門と向かい合うように「建仁寺・祇園丸山」はあった。さりげない中にも存在感のあるたたずまいは、主人・丸山嘉桜さん(58)の構想3年、建築1年というこだわりの結晶か。師走の凛と張りつめた空気の中、3軒の町家を1軒にしつらえたという料亭へ足を踏み入れた。

 酒粕は決して「カス」でない。「加寿」である。そう話すご主人は「酒は米の命。無駄なものは何1つとしてない」。今宵の料理のテーマは「春寒」。正月の慶事を演出するおめでたい懐石という。楽しみいっぱいの気持ちで「揚げもの」「焼きもの」「漬けもの」「焚きもの」の酒粕料理4品を待った。

至高の酒粕料理

スティック土佐風味 ふきのとう紅白田楽

 まずは意外な一品だ。酒粕をスティック状に整え、鰹(かつお)粉とともに揚げた。スティック土佐風味 ふきのとう紅白田楽おめでたい、ふきのとうを八丁みそと白みそで華やかに飾った。日本人好みの鰹の香りがパッと舞う。そもそも鰹は、秋にかけて親潮の勢力が黒潮より強くなると南下して「もどり鰹」と呼ばれる。低い海水温の影響で脂のりもよく、秋の味として受け入れられるが、酒粕との相性は抜群だ。食感はシンプルだが、外側はさくっと、内側はもちっと歯ごたえが心地よい。一口目で酒粕の芳醇な香りが口いっぱいに広がった。主人は「家でも簡単に作れる一品。メーン料理を出すまで酒の肴に出してみて」。「芽が出る」願いが込められたふきのとうも、口直しにさわやかだ。おめでたい、ふきのとうを赤みそと白みそで華やかに飾った。

板粕 桜形、梅形、瓢形

 黄金の引盆に花が咲いた。松葉と梅花が添えられた様は、尾形光琳筆「紅白梅図屏風」を思い出す。板粕 桜形、梅形、瓢形酒粕をこねたシンプルな一品。だが奥深い逸品か。春寒のテーマ通り、酒粕をおめでたい形に整えた。桜の花びらをしつらえた粕の中央に桜の塩漬け、梅の花びら形には梅肉、瓢形には大徳寺納豆を添えた。大徳寺納豆は糸を引かない納豆で、京菓子の薬味的存在でコクのある独特の塩味が印象的だ。瓢に散らばった3粒の大徳寺納豆は、よく見ると、「お多福さん」の顔にデザインされている。主人の遊び心がこんなところにも見える。大徳寺納豆や桜漬けのほのかな塩味に春を思うのは日本人だからだろうか。日本酒もいいが、お茶にも合う逸品だ。

酒粕漬 4種盛

 主人が「パーティー」と呼ぶ酒粕漬け料理はまるで「やまと絵」のような華やかさだ。酒粕漬 4種盛伝統工芸に用いられる装飾技法の螺鈿(らでん)や蒔絵(まきえ)といった、表面に漆で絵や文様、金や銀が輝くように、酒粕で漬けられた数々の旬の素材が盛りつけられた。中央の漆器には、蓮根と豆腐チーズ羹(かん)が盛られた。取り巻くように置かれた5本のレンゲには、丸、三角、四角に整えられた千車塔(ちしゃとう)、牛蒡(ごぼう)、焼目こんにゃくを醤油で焚いたものを辛子粕漬で漬け込んだ。茶色の桜型小皿には貝柱付焼、白色小皿にはラディッシュ&赤貝の白酢和えが置かれた。すべて紅白を意識したおめでたい色合いだ。これらの素材は全て、酒粕で1日漬けたシンプルなものだと言う。家庭でも簡単に漬けることができる方法を聞いた。

(1)市販のジップロックに酒粕と素材を入れる。
(2)ストローを差して空気を吸い取る。「真空状態」に。
(3)1日置けば完成

 特に、豆腐チーズ羹はおもしろい。見た目は真っ白な豆腐だが、口にふくむと、チーズ。いやチーズよりもまろやかで深い味わいが広がる。漬けている間も発酵が続く玉乃光の酒粕が日本人好みの“和風チーズ”を作り出した。焼き肉のお供・チシャの茎「千車塔」も酒粕に漬かることで、素材本来のうまさが際立つ。例えば、ごぼうは一緒に煮炊きしたものと馴染む一方で、本来の旨さが消えてしまう。玉乃光の酒粕の場合、強くしつこく絞らないため、柔らかくすぐ溶け込むため、ごぼう本来のうま味を壊さず包み込む印象だ。辛子粕を使うため、この上なく酒もすすむ。赤盆の上に椿の葉が飾られる、目でも舌でも幸せに酔える逸品となった。

蛤のほろよい鍋

 最後にプーンと酒粕香を漂わせながらグツグツ煮立つ鍋が運ばれた。蛤のほろよい鍋日本人好みの昆布と鰹の出汁で、薄めた酒粕を伸ばした。大粒の蛤(はまぐり)が口を開く様はほろ酔いそのもの。豆腐、束ね水菜、梅人参、引揚湯葉が酒粕に絡む。例えば家庭なら、蛤でなくとも蠣(かき)や豚でも構わない。添えられた見事な柚子を絞るのもよし、ポン酢もさわやかだ。ボリュームが欲しい場合は、うどんを入れるもよし、雑炊も最高だ。鍋には主人が考案した青竹酒が合う。青竹を削った手作りの筒に酒を入れると、酒に筒内の竹膜が溶け出す。大吟醸など味の強い酒は、竹膜が味を和らげる。お猪口も青竹で、若々しい香りが心地よい。心まで温かくなる逸品だ。

食医同源

 「医食同源と言うけど、食医同源やと思います」。丸山さんは現代人の食に対する偏向した考え方をやさしく諭した。健康のために食べるのではない、素材を食べることで結果的に健康を維持できるという信念だ。「食べることは命をいただくこと。そのために素材を生かすことが大切なこと」。簡単そうに聞こえるが、料理のブランディングばかりもてはやされる昨今、その実践はなかなか難しい。

 ずっと京都という風土ならではの季節感を料理に盛り込むことを心がけてきた。堀川三条で生まれ育ち、「高台寺土井」「露庵 菊乃井」「高台寺和久傳」といった京料理の老舗で料理長を歴任した。「京都で生まれ京都で育ち、京都しか知りませんもん」。おどけて笑うご主人だが、その美的センスはある種の「極み」に達する。金箔皿に梅桜瓢を散りばめる。ガラス皿は金銀の水引をいただく。極薄のシャンパングラスに冷酒を注ぐ。「それは京都しかない表現。保守の中の革新です」。同時に決して堅苦しくない遊び心も併せ持つ。「例えば、公園で松の葉を拾ってきて、盆の上に飾るだけで、料理の印象は大きく変わる。その松の葉を家族で、孫と一緒に集めたら、それだけで楽しいですやん」。京らしいバランスこそが信条だ。

名店紹介

建仁寺・祇園丸山

祇園丸山 落ち着いて旬の素材の旨さをそのまま料理にするという季節料理店。昼は午前11時~午後2時で、8000円~(税・サ別)。夜は午後5時から9時でコースは10000円~(税・サ別)。祇園散策の折はぜひ立ち寄って欲しいこだわりの名店。不定休。

◇東山区建仁寺正門東入南側◇電話075・561・9990

京散歩

建仁寺両足院

建仁寺両足院 建仁寺の塔頭寺院。300坪の広大な庭園は見事で、枯山水の方丈前庭と方丈東庭園、池泉廻遊式庭園の書院前庭で構成される。織田有楽好みの茶室水月亭も粋だ。散歩すると心にゆとりが生まれるようだ。料理をいただく前に立ち寄ることをお勧めしたい。

おすすめの酒

玉乃光 しぼりたて

玉乃光 しぼりたて伊吹山麓で有機栽培された美山錦を100%使用、60%以下にまで磨き上げた。生原酒を濾過(ろか)せず、しぼったそのままの新鮮でフルーティーな味と香りが楽しめる純米吟醸ヌーボー(新米新酒)


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