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玉乃光に合う肴

京野菜鍋 酒粕仕立て<露庵 菊乃井>

 江戸時代、角倉了以に開削された高瀬川に沿って広がる木屋町。明治維新の舞台にもなった歴史深いエリアだ。その一方で、鴨川の東岸、老舗料亭が軒を連ねる祇園と比べると、多彩な客層が行きかう“敷居の低い”歓楽街でもある。今年は「露庵 菊乃井」がこの地に現在の鉄筋コンクリート建ての店を構えて、ちょうど20年になる。菊乃井は洛中の美食家でその名をしらぬ人がいない存在で、最近では東京・赤坂店が料理店ガイド「ミシュラン東京版」で2ツ星を獲得するなど世界レベルの評価を受けた名門料亭だ。気軽に菊乃井の伝統に触れることができるように、あえて木屋町へ出店、洛中洛外問わず多くの客人に愛される空間となった。

露庵 菊乃井店長 村田喜冶さん そんな「露庵 菊乃井」の店長・村田喜冶(50)は、「京の懐石料理」にこだわってきた。「コースを最後まで食べていただいたとき季節の素材の旨さが分かる、そんな料理をお出ししたい」。裏方に徹した期間が長かったため、カウンター越しに客と交わす会話も、「ようやく楽しめるようになった」。笑顔に人柄がにじむ。そんな村田店長は京料理にとって大切な要素の1つを「香り」と言い切る。山椒にしょうが、七味にネギ、木の芽、そして柚子。旬の香が懐石料理に季節感を与える。そして、酒粕に合う香は柚子で、白味噌を合わすことでまろやかさが増す性質を指摘した。作っていただいた4品はすべてこの性質を踏まえて生まれた。まさに京の香の懐石だ。

究極の肴

酒粕豆腐

 ゴマ豆腐を作る要領で、裏ごしした酒粕を豆腐に合わす。酒粕はすり鉢で丁寧に伸ばして濾(こ)したものに火を加える。酒粕豆腐葛(くず)に出汁、この酒粕を合わせて練り上げる。このとき柚味噌を加えるのが「香り」を引き立てる。酒粕も味噌も、そもそも麹を元に作る点で共通している。ここに、「白には白を」と村田店長が「香り」と同じくらい大切にする「色彩」も共通、酒粕と味噌の「白い交差点」が織りなすマッチングが想像を超える旨さを生んだ。

 ひと口目には柚の香が広がり、もっちりとした歯ごたえの後には、酒粕の香が嫌みなくかぶさる。喉が辛口の日本酒を欲しがる。今年2008年は「源氏物語千年紀」。節目を記念して発売された「純米吟醸 超特撰 祝100%」がちょうどいい。

マナガツオの酒粕焼き

 寒さ厳しい京の冬、マナガツオは人気の食材だ。これぞ「真名のカツオ」と言われがあるように、しまった身は贅沢の極みだ。 マナガツオの酒粕焼き味噌焼きなどが一般的だが、ここに酒粕を使った。京都では3月3日の桃の節句に、白酒焼きを食べる習慣がある。焼き物に白酒の濃厚な香りをかぶすのだが、ここからヒントを得た。柚果汁と醤油を混ぜ合わせたたれにつける「ゆうあん」に味噌を加えた酒粕と魚を焼く。

 青い松葉に敷かれた姿は見た目も美しいが、香りも極上だ。特にひと口目に広がる柚の香にかぶさる、ふた口目の酒粕の香。特製「ゆうあん味噌」に卵白を加えたことで、フワフワ感が漂う。添えられたキンカンの甘露煮も何とも粋だ。

 この逸品には「玉乃光 山廃 純米吟醸」がお勧めだ。キモト系の酒はアミノ酸が豊富で、料理の旨みの幅を広げる。「露庵 菊乃井」で燗を注文すると、もれなく「玉乃光」が出されるという。ぜひ試していただきたい。

京野菜鍋 酒粕仕立て

 京野菜鍋 酒粕仕立て 見た目が艶やかで楽しい1人用鍋だ。特注の清水焼きは筒状で、内部に火種をくべる。備長炭がジンワリ安定して熱を加えるため、料理はグツグツと絶妙に煮え立つ。

 鍋は旬の京野菜が中心だ。九条ネギ、丸大根、金時にんじん、海老いも、壬生菜にセリと、冬の京野菜が宝石のように散りばめられ、グジと湯葉も加わる。酒粕と白味噌がベースに入り、柚の細切りがかぶさる。粕汁特有のクセがない。野菜の旨みが鍋に染み入る。

 府内3軒の契約農家が作った、安心の有機京野菜は、それぞれ鍋の具材として極上のものだ。九条ネギは太めのネギで体を温める効果がある。丸大根や金時にんじんは、甘味が強く煮崩れしない。海老いもも鍋物に最適で、壬生菜同様にビタミンが豊富で冷え性予防にも効果がある。春の七草のセリを加え、どの京野菜も身体に優しく心まで温かくなる。

 グジは甘鯛で、京料理に重用される。グジグジ水気の多い魚のため、グジと呼ばれてきた。ひと塩振って脱水させる。スズキ目の白身魚で、脂肪が少なく柔らかいので、どんな出汁にも溶け込む。これらが奏でるハーモニーは、まさに古都の奥深さそのもの。柚の香りとともに旨さをまとめる酒粕はさながら京料理のマエストロか。

雪乃玉

 雪乃玉 襖から差す古都の夕陽に照らされて、深紅の漆器に雪玉が映える。酒粕を使ったデザートで濃抹茶といただく。ユリ根の甘さに酒粕の旨さが嫌みなく溶け合う。オニユリの系統で苦味のない根と、蒸した酒粕、それぞれを丁寧に裏ごしたものを重ねる。和菓子の表面に流れるように飾られたユリ根は装飾芸術の域に入る。村田店長自ら「採算度外視の贅沢品」と称すようにコストと時間をかけて作られた逸品に仕上がった。クリームのような柔らかいユリ根に菓子楊枝を入れると、中から甘いこしあんが現われた。酒粕が甘さを抑えて大人の風味を堪能できる。樋渡秀幹料理長が、そのはかなさと美しさ、そして「玉乃光」から名付けた「雪乃玉」。残念ながら通常メニューでの提供はないが、夜のコースのデザートには、濃抹茶とともに和菓子をいただける。満足感と最後まで食べて初めて気付く京ならではの季節感。1度は経験したい。

名店紹介

露庵 菊乃井

露庵 菊乃井 コンセプトは「伝統にしばられることなく、料理人自らが、『旨い、好きや』と言える料理に徹する」。昼懐石は正午~午後1時30分入店で、4200円~(税込・サービス別)。夜は午後5時から8時30分入店でコースは1万3650円~(同)。1階はカウンターと座席、2階は座席と茶室。座席はすべて掘りごたつで使いやすい。毎週水曜日休み。要予約。

◇下京区木屋町四条下ル◇電話075・361・5580

京散歩

染殿院

染殿院 四条通から新京極通を上がってすぐ左手に「そめどのさん」と親しまれている「安産祈願」の地蔵が奉られている。平安時代、文徳天皇の后・藤原明子が祈願に訪れ、後に清和天皇を生んだと伝えられる。繁華街の喧騒の脇で静かに佇む地蔵菩薩に、京都の奥深さを思い知る。「露庵 菊乃井」の前に立ち寄るのもいい。

おすすめの酒

純米吟醸 超特撰 祝100%

純米大吟醸 こころの京 2008年は「源氏物語千年紀」。節目を記念して発売された「純米吟醸 超特撰 祝100%」は淡麗な味と独特の芳香が特徴の日本酒。京都産酒米「祝」は山田錦の原種と伝えられる「山田穂」から昭和8年に開発された最高級種で、戦後なくなったが、近年、府内の農家と行政の協力で復活した。この「祝」を100%使用した贅沢な1本に、平安貴族文化をしのばせる源氏物語絵巻(徳川美術館所蔵)を題材としたラベルを巻いた。


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