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玉乃光に合う肴

海老芋の餡かけ<天龍寺 篩月>

「天龍寺 篩月」ご主人 小谷さん  京都五山の第一として栄華を極め、四方4キロにも及ぶ広大な寺域を占めた天龍寺。京都・嵐山という観光地にありながら、開山(初代住職)夢窓疎石がプロデュースした広大な庭と池が周囲の喧噪を断ち切るようだ。特別名勝・史跡指定を受ける庭園の脇に「篩月」(しげつ)がある。

 同寺は幾度の火災を経て、形を変えながら今に続く。「篩月」のあった場所も元々修行道場があった場所。西暦2000年に50年に1度の開山遠諱があった折、250人が入れる大座敷を備えた店舗にリノベーションした。

 精進料理は寺内の別の場所で直営レストランとして15年前から参拝客に提供されて来た。天龍寺レベルの大寺院が「自ら精進料理を提供する場所は他にないのでは」と責任者の小谷卓男氏(55)。渡月橋近くの名門・嵐亭で修行を積み、精進料理店の立ち上げの折に招聘された。「最初はすぐにやめようと思っていた」と告白するが、精進料理の奥深さに魅せられ、のめり込んだ。「精進料理とは薄味で何か食べ足りない料理、ではなく、客を満たすもののはず」。独自の料理哲学を纏い、「精進キュイジーヌ」とも呼ぶべきシンプルで奥深い料理を提供する。

究極の肴

海老芋の餡かけ

 海老芋の餡かけ 秋に旬を迎える京野菜・海老芋。京都近郊・亀岡の農家の契約栽培を使う。冬はつくね芋の蒸し物を饅頭状にこねたもの。春は筍、夏は賀茂なすと、四季折々の京野菜を素材本来の味を生かす形で料理する。

 通常、海老芋は色をきれいに出すために皮をむいてから、熱湯でゆがく。しかし、ただでさえ薄味の精進料理。少しでも素材の持つ味を大切にしたいということで、芋に直火を入れる。表面をカラッと揚げ、とろみを加えるのも熱を保つため。生姜とカブラの間引き菜(春にうぐいす菜と呼ぶ京野菜)で彩りを添える。細やかな心配りが旨みを増す。

ごま豆腐

 ごま豆腐 白ごまを煎って練り上げる。早朝の日課で、その日の客数に応じて無駄なく作る。6センチ角と精進料理らしからぬボリュームで、「篩月名物」、そして唯一の通年メニューとなっている。カルメラなど調味料を一切使わず、麦、大豆、塩のみで作り上げられた醤油とわさびでいただく。ゴマ豆腐特有のねっちりとした「しつこさ」がなく、ひと味ひと味がクリーミーで食べやすい。ややもすれば「飾り」の一品が堂々の存在感を示している。

湯葉ひろうす

 湯葉ひろうす 湯葉をミルフィーユ状に重ね、加薬を包んだ。ひろうすの中は甘く焚いたしいたけ、サヤエンドウが隠れる。関西ではひろうす(飛竜頭=他にひりゅうずなど)、関東ではがんもどきの名で親しまれる。かむと汁がこぼれてジューシー。一方で湯葉1枚1枚の柔らかさに驚く。「京都は本場だけあって、身近にいい湯葉がある。地元の素材を新鮮なまま使える」と小谷氏。季節の旬のものと京都という地元のもの、時と場所が交わる偶然が京料理の奥深さを生む。一見シンプルだが口の中で複雑に広がる味わい。湯葉ほど京都らしい素材はないのかもしれない。

現代人に合った精進料理

 懐石料理のルーツは千利休の茶懐石と言われる。外国からの観光客も多く、特にベジタリアンに支持される。ハリウッドからのVIPもお忍びで訪れる。「この場所も某有名ハリウッド俳優が寝そべってお休みになられていました」。小谷氏は目を細めて離れの畳を指差した。「色々な人に出会える。精進料理が結ぶ縁が楽しい」。

 長い歴史を持つ京都は気品と安らぎに満ちている聖域。そんな空気の中で「篩月」と玉乃光も不思議な縁で結ばれている。数十年前、関牧爺元管長が、テレビで京都の玉乃光を愛飲していることを話した。そのシーンを偶然見かけた宇治田会長が、天龍寺の開山忌のたびに酒を寄進するようになった。その縁で、「篩月」でも玉乃光を出すようになった。小谷氏は「縁もありますが、純米酒の玉乃光は素朴な精進料理によく合うんです」。注文も多く、欠かせない酒になった。偶然、しかし必然。運命の不思議を思い知る。

 これからの季節は豆乳鍋(例年1月5日から3月半ばまで)目当てに訪れる客も多い。豆乳鍋と山廃の相性の良さは想像に難しくない。

名店紹介

天龍寺 篩月(しげつ)

天龍寺 篩月(しげつ) 精進料理と言えば、一汁三菜だが、一汁五菜(雪=3000円)から。月は一汁六菜(5000円)。花は一汁七菜(7000円)。別途、天龍寺庭園拝観料(500円)が必要。午前11時から午後2時まで営業。定休日は寺の開山日10月30日のみ。正月もお盆も天龍寺が開いている限り営業する。紅葉と桜のシーズンは要予約。「篩月」という名は、開山夢窓国師が建てた庵「篩月軒」からとられた。竹薮を通してみた月影が篩(ふるい)にかけたようだという意味。食事の後は庭を散策したい。

◇京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
◇075・882・9725
◇午前11時00分~午後2時00分

京散歩

天龍寺(てんりゅうじ)

天龍寺 臨済宗天龍寺派大本山の寺院で、「古都京都の文化財」の一部として世界遺産に登録されている。足利尊氏に、開山の禅僧・夢窓疎石が後醍醐天皇の菩提を弔う寺院の建立を勧めたのが縁起。京都五山の第一位とされてきた古刹で夢窓疎石作の庭園は特別史跡・名勝及び世界文化遺産に認定を受ける美しさ。

◇京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
◇075・881・1235

おすすめの酒

純米吟醸 玉乃光 伝承 山廃仕込み

純米吟醸 玉乃光 伝承 山廃仕込み 山廃は「秋上がり」といって、夏をまたぎ貯蔵する。仕込みは2月、火入れの後、そこから6カ月寝かす。自然界の乳酸菌を操りながら、味を調える。調整は経験が頼りだが、できあがりのタイミングを見定めるのが難しい。その後、「旨みが出てきて、まろやかな味に変わる。まるで角が取れて丸くなる感じ」。「山廃」は熟成してから飲むので、味わいが複雑になる。重厚なコクと切れ味のよさがのどに響く。この山廃を玉乃光伝承の純米吟醸酒として仕上げた。売れ行きが前年比120%と幅広く支持されている。


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