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玉乃光に合う肴

海老芋の雲子餡かけ<魚三楼>

 近鉄・伏見桃山駅の東側に魚三楼はある。江戸時代の明和元年(1764)の創業で、店の表の格子には、幕末の鳥羽伏見の戦いでは新撰組と薩摩藩軍の銃撃戦の弾痕が保存されている。

 讃岐出身の初代・三郎兵衛の時代から、交通の要衝だった伏見港経由で入る瀬戸内の魚や京野菜、また伏見の酒造りを支えた湧水を使い、各藩の大名屋敷の料理を提供して来た歴史深い店だ。9代目主人の荒木稔雄さんによると、代々続くレシピがあるが、「伝統を覆していくのが料理」。その信条に従い、「常に変化しながら、これ(環境の変化)に合わせるのが仕事」と新しいレシピを提案し続ける。そんな主人がプロデュースした肴を楽しみに待った。

究極の肴

海老芋の雲子餡かけ

海老芋の雲子餡かけ 京野菜の冬の定番と言えば海老芋だ。師走の錦にも美しものが並ぶ。魚三楼の海老芋は契約農家のもので定番素材だ。炊いてから油で揚げたので、香ばしい。このほっこり感に、雲子(くもこ)のまったりとしたおいしさが絡む。雲子は、真鱈(まだら)の白子(しらこ)で、ゆがき煮込んだもの。柚子の風味で仕上げた。日本酒との相性も抜群だ。

 主人によると、伏見の軟水は昆布とカツオの旨みを引き出すのに適しているそうだ。「地の水で野菜を炊くと、出汁との相乗効果で料理の旨みが増す」。伏見の水で造った酒も合わない訳がない。ただ、水が柔らかすぎるのでご飯を炊くのは不向きとのこと。そう言えば、京都のお米は柔らか目で炊かれる。逆に淡泊な白身の魚など最適だ。例えば冷えた鯛の刺身で純米吟醸がかったのと、ちょっとぬる燗の酒がいいと言う。ひとくちでグッと飲むというのは日本人ならではの愉しみだ。

 主人に玉乃光について聞くと、「ちゃんとお酒を造っているなあという印象」。地元伏見のお酒ということで人気があると言う。この料理に合う酒を聞くと「冷酒もいいが、オススメは燗酒。料理を食べて、燗酒をすーっと口に含むんです。まったり濃厚な白子の旨さに対して、ほっこりした海老芋を合わす。ギューッと凝縮した中に米の旨みが生きる」。

鯛のカブラ蒸し

 カブラ蒸し 12~2月が旬とされる地元産カブラをすりおろし、その日揚がった白身魚と合わせて蒸す。この日は明石の鯛で、店専用に届けてもらっている。あんをかけ、ほうれん草で彩りを添えた。

 カブラは亀岡市東部・篠町産。元々冬の寒い日に野菜の白さを雪に見立てたという京都らしい料理。一気にすりおろし、卵白を加えてふっくらと仕上げる。ぎんなん、にんじんなどを加えると、カブラ独特の風味と苦さに重なるように複雑な味わいを演出する。

 「定番ですが定番がしっかりできることによってアレンジがかったこともできる」と主人。基本を大事にする姿勢が見える。「お客の味の好みひとつにしても、商売して20年で変わっている。特にファーストフードの影響で濃くなった味付けが目立つ。そうじゃない、素材本来のおいしい味が欲しなったんです」。

 一方、環境に応じて食材自体も随分と変化した。例えば根菜類など昔に比べて育ち過ぎる野菜もあるし、魚は水温上昇の影響で身の締まりが悪かったりする。例えば、昔は秋サバは、その名の通り秋がおいしかったが、現在は秋の鯖はまだ脂のノリが少なく、11、12月中、冬の鯖が旨くなった。主人は「そういう変化がある」と、時代の変化に合わせて変化する柔軟性の大切さを繰り返す。

野菜も魚も旨みを押し出す

 最後に主人に聞かれた。「世界の3大料理、中華、フレンチ、もう1つは?」
 「トルコ料理でしょうか?」
 「最後の1つは国によって違います。みな母国を挙げますよ。日本料理という評価もあるでしょう」。
 「もてはやされているのは、ヘルシーな点。脂にゼラチンを使わずおいしさを表現できる料理は日本料理しかない」。だが、欧米化する日本人の味覚の変化に警鐘を鳴らす。「ファーストフードなど油脂分、ゼラチン質の旨みが濃いので薄味が減っている。魚三楼の料理の塩分量は20年でわずかしか変えていない。なぜなら、野菜も魚も旨みを押し出してくれているからだ」。日本料理の基本に忠実だ。そして「玉乃光のお酒もお客さんの趣向に合わせて変えてはる。これから世界へ出て行きはるやろ。日本料理も同じです」。料理以上に主人の誠実な言葉が胸に響いた。

名店紹介

魚三楼(うおさぶろう)

魚三楼(うおさぶろう) 「旬の食材を活かし、心を込めたおもてなし」を提供する。予約がベター。「しっかり何を食べたいと言うていただきたい」とのこと。アレルギーのある方も応相談。昼、夜、ブライダルにも対応。
詳しくは公式サイト:http://www.uosaburo.com/

◇京都市伏見区京町3丁目187番地
◇075-601-0061
◇11:00~22:00

京散歩

御香宮神社(ごこぐうじんじゃ)

御香宮神社 伏見地区の産土神で、「ごこぐう」として親しまれている。「御香水」は神社の名前の由来にもなった湧水で清和天皇によって名付けられたとされる。85年に環境省の名水百選に認定されている。また伏見の地場産業である酒造りと関連が深い。

◇京都市伏見区御香宮門前町

おすすめの酒

純米吟醸 玉乃光 伝承 山廃仕込み

純米吟醸 玉乃光 伝承 山廃仕込み 山廃は「秋上がり」といって、夏をまたぎ貯蔵する。仕込みは2月、火入れの後、そこから6カ月寝かす。自然界の乳酸菌を操りながら、味を調える。調整は経験が頼りだが、できあがりのタイミングを見定めるのが難しい。その後、「旨みが出てきて、まろやかな味に変わる。まるで角が取れて丸くなる感じ」。「山廃」は熟成してから飲むので、味わいが複雑になる。重厚なコクと切れ味のよさがのどに響く。この山廃を玉乃光伝承の純米吟醸酒として仕上げた。売れ行きが前年比120%と幅広く支持されている。


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