<米男子ゴルフ:全米プロ選手権>◇2日目◇14日◇米ミネソタ州チャスカ、ヘーゼルティン・ナショナルGC(7674ヤード、パー72)

 【チャスカ=阿部健吾】石川遼(17=パナソニック)が、メジャー3度目の挑戦で初めて予選を突破した。3バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの74で回って通算4オーバーの148。プレー終了から約7時間後、予選通過ラインにぎりぎり滑り込む62位が確定した。17歳10カ月でのメジャーの予選通過は日本人の最年少記録、決勝ラウンド進出はメジャー史上3位の年少記録。前半の17番ではプロ転向後初の4パットでダブルボギーと崩れかけたが、攻めの姿勢を貫いて「プロ世界一決定戦」と呼ばれる大舞台の決勝に残った。

 最終9番のバーディーパットが決まらず、ひざを落とし、天を仰いでから約7時間後の午後8時前。宿泊しているモーテルの部屋で夕食を終え、関係者と談笑していた石川に予選通過の一報が届いた。「素直にすごくうれしい。土、日にプレーしたい夢がかないました」。これまでには経験のないほどの時間を待ち、コースにいた関係者から電話で連絡を受けた瞬間は、ちょっと実感がわかないような感じだったという。

 「終わってしまったので、これ以上スコアはよくできない。願って待つだけです」。石川にできることはそれしかなかった。「入れば(予選通過は)大丈夫だと思っていた」という最終9番のバーディーパットを沈められず、ラウンドを終えたのは午後0時半すぎ。まだスタートしていない選手を含めて順位はちょうど100位。予選通過は上位70位タイまでで、予選通過できるかは微妙だった。

 すぐに練習場へ向かうと、スタート前の最終調整中のウッズがいた。「手首、体、足の使い方全部がずばぬけている。近くで練習するのが恥ずかしい」。米ツアーだから味わえる張り詰めた雰囲気の中、あと2日間プレーを続けたい。1時間ほどで練習を切り上げた石川は、そんな気持ちになった。「明日もよろしくお願いします」と、報道陣に向けてあいさつし、車で20分ほどの距離にある宿泊先のモーテルへ戻った。

 昼食を取ってから部屋に戻ってテレビ観戦。コースでは強風が吹き、全体的にスコアは伸びていなかった。自分の順位が徐々に上がる。夕食前の午後6時半ごろには60位台まで浮上しても、「まだ信じないよ」と笑っていたという。テレビはつけたままにしていたが、意識して見ていたわけではない。そうこうしているうちに吉報が届いた。

 石川らしさを貫いて、ぎりぎりの予選通過はもぎ取った。スコアを1つ伸ばして迎えた17番パー3。ピン手前6メートルからプロ転向後初の4パットでダブルボギーとした。続く、18番で第1打を360ヤード飛ばし「気持ちを切り替えられた」というが、「朝からちょっと背中に違和感があった。気にすることで精神的に影響したのかもしれない」。ドライバーが安定感を欠き、大きく曲がり始めた。

 それでも耐えた。後半初めて第1打がフェアウエーをとらえた7番パー5。残り240ヤードから5番ウッドで池越えの2オンに成功すると、攻めの心を失わない17歳を祝福するように「ナイストライ!」。ギャラリー席ではスタンディングオベーションが起こった。続く8番パー3でピン奥1メートルへつけ、予選突破を決めるバーディーを奪った。

 「夢」とは表現したものの予選通過では満足していない。「ドライバーの思い切りの良さが今日はなかった。思い切り振り抜きたい。まだトップ20、トップ10は狙える位置」。完全燃焼するため、決勝ラウンドにすべてをぶつけていく。