トンネルを抜けた。松山英樹(23=LEXUS)が14年6月以来となる米ツアー2勝目を挙げた。最終18番で劇的なバーディーパットを沈めて4バーディー、ノーボギーの67で回り、通算14アンダー、270でホールアウト。一時は自信を失いかけたパッティングで粘ってリッキー・ファウラー(27=米国)とのプレーオフに持ち込むと、4ホールに及ぶ死闘の末に競り勝った。3勝の丸山茂樹に次いで2人目となる日本人の米ツアー複数優勝を達成。日本男子初のメジャー制覇、8月のリオデジャネイロ五輪へ夢は膨らむ。

 パットで逃してきた2勝目をパットでもぎ取った。正規の最終18番、松山の5メートルのバーディートライ。通算13アンダーで並ぶファウラーは3メートルにつけている。真っすぐ打ち切った。ボールがカップに吸い込まれる前にガッツポーズ。「ゴルフ人生で一番いいパットだったと思います」。昨年大会の最終18番、入れればプレーオフの5・5メートルを外した。打った瞬間、ラインからずれていた。1年前と違う確信が心地よかった。

 昨年11月にダンロップ・フェニックスで国内参戦した時はグリーン上で精神的に追い込まれるほどだったという。「(パットが)入らない時が長くて自信というか、心がちょっとずつ折れてきている部分はあります。ちょっと入らなさすぎて、パターを打ちたくないレベルまでいったので」。

 本来得意という自負がある。勝つために、愚直な試行錯誤を繰り返してきた。「今週に限っては、パットにちょっと自信があった。やるべきこと、いろいろ変えているのが、うまくいっている」。プレーオフ2度目の18番4メートル、10番1・5メートルと重圧のかかる場面でもしっかり決めきった。

 米ツアー最多60万人以上の観客動員を誇るトーナメント。相手は自己最高の世界ランク4位と乗っている人気者だ。「99%は僕の応援じゃない。それなら逆に勝ってやる」。プレーオフ2ホール目でティーショットを構え直すなど、次第にナーバスになっていったファウラーは、松山のしぶとさに根負け。4ホール目で第1打を池に打ち込み、2メートルのパーパットも外した。大舞台で強者に粘り勝った。

 帰り際、ファウラーから「またやろうぜ」と声をかけられた。「手ごわいなと思われたい。あいつとはやりたくないと思われるくらいの存在になりたい」。2勝目も松山にとっては、通過点でしかない。