日本勢で唯一出場した岩田寛(35=フリー)が今季から本格参戦する米ツアーで初めて首位に立った。1イーグル、6バーディー、2ボギーの66で回り、通算11アンダー132で「60」をマークした康晟訓(韓国)と並ぶトップタイに浮上。前週フェニックス・オープンでツアー2勝目を挙げた東北福祉大の後輩松山英樹に続き、大きなチャンス到来だ。

 岩田がそうそうたる顔触れを抑え、リーダーボードの一番上に名前を連ねた。世界ランク1位のスピース(米国)をはじめ、同ランクトップ10のうち6人が出場している今大会。通算でも16試合目のツアールーキーが最高の位置につけた。

 2番パー5で、グリーン右手前のラフからバンカー越えの第3打が、あと10センチでイーグルというスーパーショットを放った。「あれで勢いに乗ることができた」。7番で7メートル、9番で2・5メートル、10番で7メートルをことごとく沈め、一時はスコアを7つ伸ばした。「スコアに対するパットの貢献度」は4・918を記録。グリーン上で5打近く稼いだ計算になる。

 過去5度全米オープンが開催された名門。「景色が素晴らしい。(天気は)最高です、最高。完璧な天候」と笑ったように、太平洋に面した美しいコースを気持ちよく攻略した。

 誰もが認めるポテンシャルを持ちながら、精神面が課題だった。高いレベルを求めるあまり自分を追い詰め、コース内でも気持ちが切れかかってしまうことが少なくなかった。昨季日本ツアーでは、心配する関係者から「やる気がないならやめればいい」と、あえて厳しい言葉でたしなめられたこともある。

 2週前のファーマーズ・インシュアランス・オープン最終日では観客も入れない強風の中をラウンド。身の危険を感じながら耐え抜き、今季最高の18位。日本とはまるで違う環境でもまれ、たくましくなってきた。「自分のベストを尽くす」。地力が試される優勝争いへ、静かに意気込んだ。

 ◆岩田寛(いわた・ひろし)1981年(昭56)1月31日、宮城県生まれ。東北福祉大の同期に宮里優作。04年にプロ転向し、06年に初シードを獲得。14年フジサンケイ・クラシックでツアー初優勝。昨年7月のセガサミー杯で2勝目、同8月の全米プロ第2ラウンドでメジャー最少ストロークに並ぶ「63」をマーク。昨季日本ツアー賞金ランク14位。今季から米ツアーに本格参戦し、現在ポイントランク141位。得意クラブは「全て」。177センチ、74キロ。