<米男子ゴルフ:全米オープン>◇プレーオフ◇16日(日本時間17日)◇米カリフォルニア州サンディエゴ、トーリーパインズGC南コース(7643ヤード、パー71)

 【サンディエゴ=近間康隆】タイガー・ウッズ(32=米国)が大会通算91ホールの死闘を制した。ロッコ・ミーディエート(45=米国)との18ホールプレーオフは、両者イーブンパーの71と譲らず、延長サドンデスへ。1ホール目の7番パー4でウッズがパーセーブし、パーを逃したミーディエートを振り切った。4月に手術した左ひざの痛みをこらえ、6年ぶり3度目の優勝でメジャー通算14勝目。史上2人目の「トリプル・グランドスラム」を達成。18日に1歳になる長女サム・アレクシスちゃんの前で、今までで一番うれしい優勝を飾った。

 こんなに苦しんで勝ったメジャーは初めてだった。左ひざの痛みを抱えながら初めての18ホールプレーオフ。10番終了時には3打リードも、粘る相手に3連続バーディーを決められ、いったんは逆転を許す展開だった。だからこそ、勝利の後に「メジャーの優勝の中で、これが最高の優勝だと言えるよ」という言葉が出た。5日間で通算91ホールに及ぶ、全米オープン史上に残る激闘を制した。

 支えになったのは、昨年の全米オープン最終日翌日に生まれた長女サム・アレクシスちゃんの存在だ。「娘がいなければ、ここまでできなかった」。4月に手術を受けた左ひざは完治にほど遠く、痛みに顔をゆがめたり、クラブをつえ代わりに歩く痛々しさが目立った。左足の踏ん張りが利かず、ショットがぶれた。完全無欠のはずの男がぶざまな姿をさらしながら、最後まで食い下がった。

 15番パー4では、隣の9番に打ち込みながら果敢にグリーンを狙って2オン。喝采を浴びたが、先にミーディエートにバーディーを決められ、リードを奪われる歯がゆさもこらえた。

 2カ月間、実戦から離れていた。自力で歩けず、トレーニングもできなかったという。「トレーニングもせず、ただじっとしているのは大変。サムが大きくなっていくのを見ることで救われた」。苦しいとき、サム・アレクシスちゃんの笑顔に癒やされて、この日に備えてきた。術後初めて18ホールを歩けたのは今大会初日だった。それでも「試合に出るからには言い訳はできない」と、世界NO・1の誇りをかけた。

 その勝負強さと勝利への執念が、18番パー5で結実した。第1打はフェアウエーをとらえ、2オンに成功させ、「全身全霊を込めて、バーディーを取りにいった」。1メートル弱のバーディーパットに対し、キャディーと何度もラインを確認し、空飛ぶカモメの影がグリーンを横切ると、すかさずアドレスを解く。ボールに魂を込めて冷静に沈め、土壇場でミーディエートに追いついた。完全にペースを奪い返し、延長1ホール目では相手のミスを誘って、パーで勝利を手に入れた。

 「娘が生まれて初めての全米オープン優勝だからね」。サムちゃんは18日が1歳の誕生日。優勝は、勇気をくれた愛娘へのビッグなバースデープレゼントだった。自分に似た大きな目をパチクリさせる娘を、大事に左腕で抱っこした。死闘を終え、ウッズは32歳のパパの顔になっていた。