<男子ゴルフ:全英オープン>◇第1日◇17日◇英国・ロイヤルリバプールGC(7312ヤード、パー72)◇賞金総額800万ドル(約8億円)優勝賞金166万9512ドル(約1億6695万円)

 【ホイレーク=塩畑大輔】2度目の出場でメジャー初制覇を目指す松山英樹(22=LEXUS)が、徹底した刻みの戦略と、バンカーからのスーパーショットで難コースを攻略した。5バーディー、2ボギーの69で回る上々の滑り出し。初出場の昨年はスロープレーの1罰打を乗り越えて6位に入った。米ツアー初優勝も経験して臨んだ今回は技術、体力、そして戦略面で、さらに成長を遂げていることを印象づけた。

 並外れたパワーと読みで大ピンチをしのいだ。17番パー4。松山はフェアウエーからの第2打を、グリーン右のバンカーに打ち込んだ。ボールはほんの一部が地表にのぞくだけで、ほとんど埋まっていた。競技委員が立ち会い、表面の砂を少しだけ払って、ボールのロゴで松山のものだと確認する必要があった。

 トッププロでも球を出すのは容易ではない。打てたとしてもボールの高さ、方向、距離すべて予想し難い。しかも目の前には全英特有の高いあご。低く出れば当たってバンカーから出ない。あごが低い横方向に打ち出し、ボギーで済ませるのが、最善の策にみえた。

 しかし、松山は「実は練習ラウンドで、同じような状況から打ってみていた。その時もうまくいったので」と高いあごに向かって構えた。サンドウエッジを思い切り打ち込むと、大量の砂もろともボールはピンの左2メートルにピタリと止まった。奇跡的なパーセーブ。同組のマキロイに夢中の地元英国ファンも、この時ばかりは拍手を惜しまなかった。

 昨年は初出場ながら、決勝ラウンドでも優勝争いを引っ張った。しかし第3日の17番でのスロープレー罰打も影響し、最終的には6位に終わった。その時を振り返り「あれで自分が何をしなければならないか分かった。この1年で積み上げてきたことを結果につなげたい」と意気込んでいた。

 バンカーショット、アプローチなどグリーン周りの技術は、目標の海外メジャー制覇に向けて、この1年重点的に磨いてきた。そして6月の米ツアー、メモリアル・トーナメントで優勝するなど、経験を重ねて戦略面も成長した。この日は、ドライバーの使用を18番の第1打のみに限定。選手全体の第1打飛距離が平均280ヤード前後を推移する中、松山は238ヤード止まり。その代わり、フェアウエーキープ率は78%と高い数字を示した。

 連続ボギーの直後で、どうしてもバーディーが欲しかった16番パー5でも、第1打で2番アイアンを握った。実は先に打ったマキロイ、スピースがドライバーだったのを見て、松山もドライバーを打ちたがった。しかし進藤キャディーは2本指を立て、2番アイアンでのショットを勧めた。戦略の徹底が、流れを変えるバーディーにつながった。

 常に多くのファンの喝采を浴びる、メジャー通算2勝のマキロイ、昨年の米ツアー新人王スピースの若きスター2人と同組に入った。それでも「緊張は全くしなかった。彼らは彼らの考えでゴルフをする。特に参考にするとかもない」と気後れのかけらもない。大会の主役の1人として、堂々たるスタートを切った。

 ◆ロイヤルリバプールGC

 海からの強風が名物のリンクスコース。開場は1869年と古く、97年に全英を初開催。今回は06年以来8年ぶりとなる。全長は06年より54ヤード延びて7312ヤードで争われる。8年前は熱波に襲われて芝が茶色だったが、ことしのコースは美しい緑に覆われている。06年優勝者のウッズは、ラフなどを避けるために4日間で1度しかドライバーを使わなかったといわれる。今回も茂みが深く、フェアウエーをさらに狭くしており、選手を悩ませている。ともにパー5の16、18番は2オンが十分に可能。終盤の劇的な逆転も見込める。