<男子ゴルフ:ダンロップフェニックス>◇第1日◇20日◇宮崎・フェニックスCC(7027ヤード、パー71)◇賞金総額2億円(優勝4000万円)

 還暦を迎えた中嶋常幸(60=フリー)が、1イーグル、5バーディー、3ボギーの67で回り、首位に3打差の4位と好発進した。1985年(昭60)の大会覇者が、いまだ健在ぶりをアピールした。

 中嶋の頭の中に歌が巡る。

 “NO・1にならなくてもいい。もともと特別なOnly

 one”

 SMAPの「世界に一つだけの花」の一節だ。「ワン、ワンと続くでしょ。それでワンパットだよ」。中嶋には、パット好調の秘策が2つあった。その1つがこの歌を歌いながらパットすることだった。そんな調子で、上がりの7番パー5で7メートルに2オンしてイーグル。8、9番のパー4も、6メートルを入れる連続バーディー締めで、4アンダー67。4位と好発進した。

 中嶋が使うパターは「短尺以上中尺未満」の40インチ(約100センチ)で、太グリップを装着している。ツアー48勝の永久シード選手は、40年以上も修羅場で戦ってきた。手がうまく使えず長尺パターに頼ることもあったが、先月20日に還暦を迎えた男は、歌を歌いながらパットすることで、手の動きをリズムよくする工夫をしたのだ。

 秘策はもう1つ。「ボールをよく見ること」。日本人選手唯一の世界4大メジャーすべてにトップ10入りしている名手が、基本中の基本に立ち返った。こんな思いにさせるのも、この大会が中嶋にとってはかけがいのない大会だからだ。

 29年前の85年大会。今は亡きセベ・バレステロスとの激闘を制して、日本選手で初めてこの大会に勝った。「一番勝ちたい試合だったから。あの頃は目標だったね」。中嶋がふと遠くを見た。そして「今は夢だね」と笑った。その夢を果たせば、06年の三井住友VISA太平洋マスターズ以来の「NO・1」となり、ツアー最年長優勝の記録を大幅に塗り替える「オンリーワン」の男となる。【町野直人】

 ◆中嶋の戦績

 83年に年間8勝を挙げるなどツアー通算48勝で永久シードを取得した。賞金王4度。最近の優勝は06年の三井住友VISA太平洋マスターズで、52歳23日の優勝はツアー制度施行後、3番目の年長記録。88年全米プロ選手権3位などメジャー4大会すべてでトップ10入りした唯一の日本人選手。05年から国内シニアツアーにも出場し5勝を挙げている。

 ◆ツアー年長優勝記録(シニアをのぞく)

 国内男子では02年ANAオープンで、尾崎将司が55歳7カ月29日で優勝したのが最年長記録。米ツアーでは65年グレーター・グリーンズボロ・オープンでのサム・スニードの52歳10カ月8日。女子ではゴルフ世界主要ツアーの最年長V記録として国内女子の岡田美智子の50歳312日(95年大王製紙エリエール)がギネス登録された。米女子ツアーではベス・ダニエルの46歳272日(03年カナダ女子オープン)。