シンクロナイズドスイミングのジャパンオープンは、第91回日本選手権を兼ねて、2日から東京辰巳国際水泳場で開催される。7月開幕の世界選手権(ロシア・カザニ)に向けて、日本代表も出場。同大会で初めて採用される男女混合デュエットの日本代表、足立夢実(26=国士舘シンクロク)安部篤史(32=トゥリトネス)もデュエットのフリールーティンに特別参加する。

国内最高峰舞台に史上初の男性演技

 史上初めて男性がシンクロの国内最高峰の舞台に立つ。男女混合デュエットの代表の安部は、3月から2年ぶりに現役復帰した元女王の足立とともに本格練習を開始。女子特有のスピード、柔軟な動作を合わすことは難しい。それでも「克服しないといけない」と必死で動きを合わせている。

 男子シンクロを扱った映画「ウォーターボーイズ」に魅了され、水中パフォーマンス集団トゥリトネス入り。男子シンクロの第一人者として、国際大会での優勝実績もあった。2月の代表選考会では高い技術と豊かな表現力で1位となり「初代男子代表」に決定。足立とともに世界の表彰台を目指す。

 「ショーと違って競技は大変。(足立に)どこまで近づけるか。焦りもあるが、楽しむことを心掛けている」。今大会は、3日に行われるデュエットのフリールーティン予選に出場。本番と同じように審査員からも点数が出る。日本や世界のデュエットの中で、どういう評価がされるか。テクニカルルーティンに出場しないために決勝進出はないが、世界選手権でのメダルに向けて貴重な実戦の場になる。指導する花牟礼コーチは「全然できないところから、かなり成長した」と安部に期待を込めた。

 ◆競技内容 泳者が1人の「ソロ」、2人の「デュエット」、4~8人の「チーム」、8~10人の「フリーコンビネーション(FC)」の4種目で争う。FCはソロ、デュエット、トリオ、グループを自由に組み合わせて演技し、3人未満のパートと8~10人のパートを各最低2回泳ぐ。プログラムのうち、「テクニカルルーティン」は、音楽に合わせて決められた規定要素を取り入れて行う。また、「フリールーティン」は音楽に合わせて自由に演技する。なお、FCはフリーのみで争われる。

新生日本アピール

エース乾友紀子(右)と三井梨紗子
エース乾友紀子(右)と三井梨紗子

 デュエットとチームにとっても、世界選手権に向けて大事な大会となる。昨年、04年アテネ五輪まで長く日本代表を指導した井村雅代氏が10年ぶりに日本代表コーチに復帰。10月のW杯(カナダ)ではエース乾と三井で組んだデュエットとチームが銀メダル。08年北京五輪から遠ざかっている世界のメダルを視野に入れた。チームのテクニカルルーティン(TR)では「弥栄日本」と題した日本調のプログラムで新生日本をアピールする。

5月2日からシンクロジャパンオープン2015

新生井村ジャパン
新生井村ジャパン

 シンクロナイズドスイミングの「ジャパンオープン2015兼第91回日本選手権」が5月2~4日、東京辰巳国際水泳場で行われる。話題は7月の世界水泳(ロシア・カザン)で正式種目となる男女混合デュエット。日本からは足立夢実(26=国士舘シンクロク)・安部篤史(32=トゥリトネス)組が出場するが、世界での舞台を前に、国内で演技を初披露する。また、井村雅代コーチの下、実力を磨いた女子代表も注目。16年リオ五輪を前に、カザンでの表彰台復帰を狙う。ジャパンオープンは、その試金石となりそうだ。

日本代表オフィシャルパートナー支援

 シンクロ日本代表オフィシャルパートナーのヤクルト本社は今年、創業80周年を迎えた。創始者の代田稔が乳酸菌の強化培養に成功し、1935年に乳酸菌飲料「ヤクルト」が誕生した。今では世界33の国と地域で、毎日3000万本を超える乳製品が愛飲されている。5月のジャパンオープン、7月の世界水泳に向け、万全な体調管理が必要な代表選手たちにとっても、力強い味方だ。

5月2日からシンクロジャパンオープン2015

 シンクロナイズドスイミングの「ジャパンオープン2015兼第91回日本選手権」が5月2~4日、東京辰巳国際水泳場で行われる。7月のロシア・カザン世界水泳で表彰台復帰を目指す日本代表が、イタリア、ブラジルなど世界の強豪国を迎え撃つ。20年東京五輪でのメダル復活に向け、世界にアピールしたい日本。16年リオデジャネイロ五輪もにらんだ新演技をお披露目する。

7月ロシア「メダルを取りに行く」

夏の世界水泳でメダルが期待される乾友紀子(右)三井梨紗子の日本代表デュエット
夏の世界水泳でメダルが期待される乾友紀子(右)三井梨紗子の日本代表デュエット

 デュエット代表の乾友紀子(24=井村シンクロクラブ)と三井梨紗子(21=東京シンクロクラブ)は今、自分たちを徹底的に「追い込んでいる」(乾)。テクニカルルーティン(TR)では、新曲の振り付けを猛練習中。フリールーティン(FR)は、曲は昨年と同じだが、中身を濃くしようともがいている。

 エース乾は井村雅代ヘッドコーチ(64)から、足を力強く血の通ったものにするようにとの指導を受け、可動域を広げるストレッチに打ち込む。「上半身が平面的ではなく、立体的に回旋できるようにトレーニングしている」。一方、三井は、隙のない足を作らねばいけないとの指示で、足の間を締める練習に一から取り組んでいる。「昔は正しく締められなかったが、今は矯正できてきた」。乾も「きれいになってきた」と三井の努力を認めている。

 昨年の乾は、10月のW杯(カナダ・ケベックシティー)まで「訳も分からず突っ走った」。井村コーチは「去年は試合に出すのが精いっぱい。霧の中で演技しているようだった」と評した。しかし、そのW杯では成果も上げた。13年世界水泳で4位ウクライナ、5位日本だった順位を逆転。中国に次ぐ2位に食い込んだ(ロシア、スペインは欠場)。今年の乾は「練習も理解した上で取り組めている。W杯でできたことを、さらに上回る演技をしっかり見せたい」と気合十分だ。

 今季の日本代表は、5月のジャパンオープン兼日本選手権と7月の世界水泳だけに照準を合わせた。乾は「日本選手権までは、できる限り難しく、複雑なことにチャレンジしていく」。三井も「難しいところで合わせていきたい」と向上心を見せる。そんな2人の今年の目標は、もちろん、世界水泳での表彰台。「日本には7種目のどれにもチャンスがある。メダルを取りに行く」。エース乾は昨年とは違う目の輝きを見せた。

 ◆乾友紀子(いぬい・ゆきこ)1990年(平成2年)12月4日滋賀県生まれ。小学1年でシンクロを始め、同6年から井村シンクロクラブで学ぶ。ソロで06年世界ジュニア銅メダル。デュエットでは08年世界ジュニア銀メダルも、11、13年世界水泳と12年五輪では5位に終わった。169センチ。

 ◆三井梨紗子(みつい・りさこ)1993年(平成5年)9月23日、東京生まれ。小学生から注目され、ソロで10年世界ジュニア4位。12年ロンドン五輪では最年少チーム代表で5位。14年から乾友紀子との日本代表デュエットで、アジア大会とW杯ともに銀メダルを獲得した。168センチ。

井村HCは代表の肉体改造に取り組む

厳しく選手を指導する井村雅代・日本代表ヘッドコーチ
厳しく選手を指導する井村雅代・日本代表ヘッドコーチ

 メダル請負人・井村ヘッドコーチは、日本代表の肉体改造に取り組んでいる。1年前、2回懸垂できる選手が5人に満たず、0回の者すらいたが、米国海軍特殊部隊司令官が開発したTRXサスペンショントレーナーも導入し、筋力、バランス、柔軟性などを鍛えさせている。

 「動ける体作りからやっている。全体を使って自由自在に動ける体にしたい」との熱い思いで、選手を叱咤(しった)激励する井村ヘッド。東京・国立スポーツ科学センター(JISS)で1月15日から始まった今季の合宿では、「3月までは調整しないで、思い切り練習させる」という。不得意なリフト技術向上のため、ジャンパープロジェクトも立ち上げた。中村麻衣(26)丸茂圭衣(22)計盛光(20)宮崎夏実(21)を候補に体操、トランポリンなどで技を磨く。「この中からできた子を選び、リオ五輪につなげる。そして、東京五輪に向けて克服させる」と目を光らせている。

 合宿の練習は朝7時半から。「ハードなトレーニングで、みんな死ぬ思い」だという。しかし、「選手もコーチも全員が一生懸命。JISSで24時間できることが貴重だと、やっと分かってきた」と井村ヘッドは手応えを感じている。「去年のW杯で世界のメダルが見えた。カザンでは狙います」と言い切る。

 「ジャパンオープンは世界水泳前唯一の国際大会。ここで本物になって世界に臨む」。疲れた様子で午後の練習を再開しようとする選手に、井村ヘッドの声が飛んだ。「背中が暗~い!!」。怖いが、深い選手愛に満ちた言葉だった。

 ◆井村雅代(いむら・まさよ)1950年(昭和25年)8月15日、大阪府生まれ。84年ロス五輪コーチとして日本のメダル獲得に貢献。85年に井村シンクロクラブを設立し、奥野史子、立花美哉ら五輪メダリストを育てた。

ヤクルト乳製品がマーメイド支える

日々のヤクルト製品愛飲で体調管理に努める乾友紀子(左)三井梨紗子
日々のヤクルト製品愛飲で体調管理に努める乾友紀子(左)三井梨紗子

 ヤクルト本社提供の乳製品が、今年もシンクロ日本代表を支える。中でも生きて腸内に到達し、腸内環境を改善する乳酸菌シロタ株を、1本(80ミリリットル)あたり400億個含んだヤクルト400は力強い味方。エース乾は「おいしくて体にも良いのでありがたい」と話す。甘さひかえめが良い選手には、カロリー30%カットのヤクルト400LTもある。世界水泳に向け、体調管理に不可欠な存在だ。

【大会日程】

5月2日(土)ソロ・チーム・デュエット各TR、ソロFR予選
5月3日(日)チーム・デュエット各FR予選、フリーコンビネーション決勝
5月4日(月・祝)開始式、チーム・デュエット・ソロ各FR決勝

【大会概要】

◆大会名称
SYNCHRO JAPAN OPEN2015
第91回日本選手権水泳競技大会 シンクロナイズドスイミング競技
◆日時
5月2日~4日
◆会場
東京辰巳国際水泳場
(東京メトロ辰巳駅徒歩10分)
◆出場予定国
イタリア、英国、スイス、ブラジル、スロバキア、ウズベキスタン、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、韓国、日本
◆料金
3日間通し指定席=1万5000円、ブロック指定SS=5000円(5月3日分、4日分は売り切れ)、同S=4000円、自由席=2000円
◆前売り所
チケットぴあ 電話0570-02-9999
◆テレビ放送
5月4日午後3時5分からNHK総合テレビで放送予定
◆問い合わせ
日刊スポーツ新聞社内大会事務局 電話03-3547-0900
◆関係団体
主催 日本水泳連盟
主管 東京都水泳協会
後援 日刊スポーツ新聞社、上月財団ほか
特別協賛 ヤクルト本社
協賛 コーセー、レオパレス21、日本航空、日本製粉、味の素、セイコーホールディングス、ミズノ、バカラ パシフィック、ヤマハ発動機、オーエンス、タキロンマテックス
協力 スポーツアカデミー、鈴乃屋
◆公式ページ
>>日本水泳連盟シンクロページ