<大相撲初場所>◇8日目◇16日◇東京・両国国技館
横綱白鵬(25=宮城野)が、西前頭3枚目玉鷲(26=片男波)をはたき込みで破り勝ち越しを決めた。初日から8連勝での勝ち越しは16度目。平幕栃乃洋(36)が敗れたため、ただ1人の全勝となった。約50年ぶり2度目の会場での大相撲観戦となった、プロ野球巨人の長嶋茂雄終身名誉監督(74)の前で、横綱相撲を披露した。
付け入る隙さえ与えなかった。白鵬は立ち合い、右のかち上げで玉鷲の上体を起こした。そのまま押し込むと、今度ははたき込み。わずか3秒3で完勝した。「流れがあるからね。自分の相撲を取っただけ」と、自然体を強調した。単独トップに躍り出るとともに千代の富士、朝青龍、大鵬、北の湖の大横綱に次ぐ歴代5位となる、16度目のストレート給金を決めた。
これに、約50年ぶりに生観戦した長嶋終身名誉監督は「やっぱり横綱はスピード感が違うな~。貫禄勝ちというよりも相撲にならなかったな」とうなった。白鵬と長嶋氏は昨年12月、女子ゴルフの宮里美香が開催した会合で同席。白鵬は「すごく優しそうなイメージ。テレビでプレーを見たことがあるけど美しい。野球をやるために生まれてきた人。それが国民の心をつかんだと思う」と、国技を背負う立場だけに、国民に愛される姿を吸収しようと目で追った。
もともと白鵬は巨人ファンで、08年の巨人-中日戦では始球式も務めた。母国モンゴルで野球協会の名誉会長を務め、用具を寄付したこともある。それだけに「野球は五輪種目から外れているが、長嶋さんにも応援してほしい」と訴えた。
昨夏、野球賭博問題が起きて以降、角界で野球の話題は極端に減った。定番だったプロ野球の始球式は、皆無になった。だが新年を迎えたところで球界を代表する長嶋氏が来場。交流ムードが加速しそうだ。また、立ち合いの緊張感を「満塁でサヨナラがかかっている場面に似ている」と、野球の話が止まらなかった。
前日7日目の取組後には歌手の故尾崎豊さんの長男で、昨年から芸能活動を始めた尾崎裕哉らと、都内の部屋でちゃんこを囲んだ。長嶋氏と同様、国民の心をつかんだ人物の遺志に触れた。また同席した関係者からは、来年にもモンゴル巡業を行いたい意向を伝えられた。かねて課題の「心」の成長を重ね、今年に入ってサインで書く「夢」のある話が舞い込む。歴史に残る大横綱へ、また1歩近づいた。【高田文太】

