9月29日、本拠地でのアスレチックス戦に3番投手兼DHで出場したエンゼルス大谷翔平選手。ファンの大声援を受けながらマウンドに上がります。この試合もキレッキレの投球で敵陣に安打を許しません。ファンも大興奮です。
初回、打席に入る大谷選手は敵陣のベンチに向かっておどけた表情を見せたかと思うと、笑顔であいさつします。相手もきっと笑顔だったことでしょう。適時打を放った後も、相手に安打を許さず、力の入った投球が続きます。
回を追うごとに緊張が増してきます。そんな中で迎えた8回。捕手スタッシの好捕もあり2アウトを迎えます。ノーヒットノーランへの期待が一層高まります。
打者コナー・カペルへの95球目です。放たれた打球は三遊間へ向かい、ファインダー越しには、遊撃手リバン・ソトが必死で打球に飛びつく姿がスローモーションのように見えます。誰もが固唾(かたず)をのんで見つめる中、無情にも打球はグラブに当たりセンターのマイク・トラウトの方に転がりました。スタジアムは大きな、大きなため息に包まれました。大谷選手も少し悔しそうな表情を見せ足を上げます。
うなだれるソトや肩を落とす同僚を背に捕手マックス・スタッシに手を上げて謝っているかのように話しかけます。そして落ち込む同僚にも気遣って笑顔です。
そんな姿に観客席からは拍手が起こり、ノーノーを阻止したはずの敵陣の打者コナー・カペルにも笑顔はなく、一塁コーチもカペルの肩に手を回し神妙な表情で、大谷選手をじっと見つめていました。誰もが偉業を後一歩の大谷選手に対するリスペクトを表していました。
期待されたノーヒットノーランはならず、8回を投げ終えベンチに戻る大谷選手を水原一平通訳、首脳陣、ナインが迎えます。もちろん、皆さん悔しそうな表情や、神妙な表情です。そんな仲間を前に少しおどけ、笑顔で接していました。ファインダー越しに見えた器の大きさに、シャッターを押しながら私もジーンときました。
誰もが見たかった大谷選手のノーヒットノーラン。いつか近い将来に見られ、撮れる気がしています。