新型コロナウイルス感染拡大の影響で今季参加を辞退する選手やコーチが続出する中、大病を患い感染リスクが高いにもかかわらず今季参加を決めた選手がいる。インディアンス一筋でプレーし11年目になる先発右腕カルロス・カラスコ(33)だ。2017年に18勝6敗でア・リーグ最多勝に輝き、18年も同最多の2完投を含む17勝10敗とエース級の活躍をしたが、昨年6月に血液の病気で負傷者リスト入りし、同7月に白血病であることを公表した。

チームを離脱して闘病を続け、驚異的回復力で8月28日に復帰を果たし、9月1日にリリーフとして復帰後初登板。闘病明けの登板は11試合すべてリリーフだったが、今季は先発として完全復帰を目指しており、今年2月には強い意気込みでキャンプに臨んだ。

ところが3月12日、MLBが新型コロナウイルス感染拡大のため開幕延期を発表。短縮シーズンの開催が協議され、基礎疾患を持つなど感染リスクの高い選手はシーズン参加を辞退しても規定の報酬を受け取れるなどの措置が取られることになった。米野球メディアの多くは、白血病を克服したばかりで免疫力が落ちている可能性のあるカラスコは、辞退者の1人になるのではないかと予想した。

しかしカラスコは、今季参加することに、最初からまったく迷いがなかったという。開幕延期が決まりフロリダ州の自宅に戻るとすぐ、玄関の目の前に自分専用のブルペンを作り、延期が続く期間中に近所の大学生捕手を相手に毎日投球練習を続けた。投球の様子はビデオにおさめ、それをフランコナ監督に送り続けて先発に復帰するべく猛アピールをしていたという。

サマーキャンプ開始前には、医師や球団医療スタッフと十分に話し合い、シーズン参加のゴーサインをもらった。インディアンスのチーム内ではデリーノ・デシールズ外野手(27)の新型コロナウイルス陽性が判明し、ブラッド・ミルズ・ベンチコーチ(63)が今季参加を辞退するなど、感染拡大の影響が出ている。

だが球団は、今季参加を決断したカラスコを全面サポート。グラウンドのバックネット裏にある個室式の客席を改装してカラスコ専用のロッカールームにし、他の人との接触を極力回避した。チーム内では手洗いやマスク着用などの感染予防対策も、厳格に守っているという。カラスコはキャンプ再開後のZoom会見で「自分がこの場にいられるということが何より。医師と球団医療スタッフのおかげで、必要な環境はすべて整っている。マウンドに戻り、投げる日が待ち遠しい」と気持ちを高ぶらせていた。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)