メジャーのポストシーズンも大詰めを迎え、メッツとロイヤルズが、それぞれ各リーグを勝ち抜き、ワールドシリーズ進出を決めました。その一方で、ここへきて大リーグ機構が、シャンパンファイトの在り方に、疑問を呈し始めました。というのも、近年は試合後のシャンパンファイトが、中継テレビ局の放送延長枠などで生放送されるようになったこともあり、これまでは明かされていなかった細部にいたるまで、公共の電波などで伝えられるようになったからです。

 機構側の通達は、少しばかり厳しいものでした。「シャンパンはノンアルコールであること」に始まり、「1選手2本まで」、「掛け合うだけで飲むことは禁止」、「シャンバン以外のアルコールはビールだけで、大リーグ機構の公式スポンサー(バドワイザー)に限る」などの内規を伝達したと言われています。さらに、近年定着した球場内でのファンとのシャンパンファイトにも、厳しい規制を敷きました。ベンチ周辺で待ち受けるファンの中には、未成年者がいる可能性もあるだけでなく、選手や関係者の子供達がシャンパンを手にする光景が映し出されたこともあり、過度の「お祭り騒ぎ」に歯止めをかけようとしたものと見られます。

 そもそも高給取りのメジャー選手が、緊迫した公式戦やプレーオフを勝ち抜いた際、その開放感や喜びを表す一端として、「高級酒」を掛け合うことが習慣になり、シャンパンファイトは定着しました。古くは、1967年、カーレースの「ル・マン24時間耐久レース」のゴール後、高級シャンパンを掛け合ったことが発端と言われていますが、メジャーではもっと古くからビールを掛け合っていたという証言もあります。無論、当時は映像で報じられることもなく、社会的影響も少なかったことで、「内々のお祝い」として浸透したようです。

 今回、メジャー機構側が、クギを刺そうとした裏には、レンジャーズのハミルトンをはじめ、ヤンキースのCC・サバシアがアルコール依存症を告白し、治療を要するようになった事情があることは間違いないでしょう。

 暴力、性問題をはじめ未成年者への影響を考慮することは日米を問わず、大切なことですが、それらとシャンパンファイトは同じ「くくり」なのでしょうか。寿命が縮みそうな激闘を勝ち抜いた選手達が、少しばかり戸惑い、遠慮しながらシャンパンを掛け合う姿は、どことなく「気」が抜けたような印象を受けてしまうのですが…。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)