昨年、ダイヤモンドバックスとマイナー契約を交わした吉川峻平投手(24)が、アリゾナ州スコッツデールのマイナーキャンプで1年目への準備を続けています。ダイヤモンドバックスとの交渉過程で、日本野球連盟の規約に抵触したため、再登録資格を剥奪され、事実上「永久追放」とも言える処分を受けました。しかも、ドラフトの上位指名候補だった吉川の場合、将来的に帰国したとしても、2年間は日本のプロ球団と契約できない「田沢ルール」が適用されてしまいます。それでも、メジャー挑戦を決断しました。渡米後、約3週間が経過した4日(日本時間5日)、現在の心境を率直に語ってくれました。

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-米国での新生活

「練習時間は短いですけど、毎日休みなくあるので2月はアッという間でしたね。気がついたら3月に入ってたという感覚です」

-体調、仕上がりは

「プロとして1年間やっていくのが初めてなので、自分の中で正解も何も見えてないです。とはいえ、同じようにやっていくわけにはいかないし、とりあえず自分のイメージで…。そのあたりはプロの先輩にオフシーズンにしてもシーズンにどう入っていくかとは聞いたりしていないです。特に、平野さん(佳寿=ダイヤモンドバックス)はリリーフなので、スターターとは調整法もまったく違うと思いますし、そういう意味ではあまり聞かない方がいいと思って、あえて平野さんには聞かないようにしています。4月から試合が続いていく中で、どれくらい2月、3月にやればいいかを想像して、あまりやり過ぎないようにしています」

-ブルペンでの球数などは

「あまり多く投げるのも好きではないんです。ただ、時間の縛りがあるので、どんどん投げないといけない。その時間の縛り、球数とかが、あるのは聞いてましたが、僕が考えていたよりは、そこまで厳しくないというか。日本のプロでやってきていたら、物足りないと思ったかもしれないですけど、プロ1年目として初めてなので、ずっとルーティンを持ってきた先輩たちよりはなじみやすいというか、入っていきやすいんじゃないかと思います」

-現時点の力加減

「今は6、7割くらい。球(滑り)は気にしないようにしているとはいえ、日本とは違うので、低めにイメージを持って、あまりここでガッと行かないようにしています。フォーム全体の力を抜いて、最後だけ、手というよりも胴体だけで切って、下に行くイメージでやっています。これから力入れた後に最後の一押しが出てきてくれたらいいと思ってます」

-このキャンプのテーマは

「すべてが初めてなので、あまり深く考えることなく、とにかく最初は絶対に打たれるでしょうから、いろんな課題が出てくるはずです。その中で、どんどんアグレッシブにストライクゾーンに投げて、そこから自分の幅を広げられたらと思うので、まずは絶対に(四球などで)自滅はしないようにと思ってます。そういう意味では、コントロールに関してこっちのボール、環境にも慣れて、日本と同じような感覚で投げきれるように持っていきたいと思います」

-打たれるのも勉強

「打たれることは当たり前だと思っているので、むしろ打たれなかったら怖いです。どんどんストライクを投げて打ってもらいたいと思います」

-どんなシーズンにしたいか

「とにかくケガはしたくないです。ただ、僕はこっちに来る契約等にあたっていろいろありましたけど、最終的には自分で選んだ道です。だから、たとえケガしたり、打ち込まれて下に落ちたりしても、それも自分が選んだ道。憧れの米国で野球ができることへの感謝とか、野球をやっていて楽しいと、ずっと思えるように、しっかりやりたいと思っています」

-日本ではなく、より険しい道を選んだが

「周りの方には、退路を断ったとか、あえて厳しい方に行ったとか、言って頂くんですけど、僕の考えでは、どっちも同じくらい険しい道だと思っています。日本で(プロに)行ったとしても、絶対に1年目から活躍できるわけはないですし、こっちに来て下から始めるわけですが、日本でも下から始める可能性もあるわけですから、どっちが険しいという考えは持っていません。簡潔な言葉で言うと、どっちも難しいなら、やりたい方でやりたいという感じです。どちらでも失敗する可能性はありますし、日本にいたら100%活躍できて10年くらいできるとかの保証があれば考えたかもしれませんが、そんな保証はないわけですから、それだったら、やりたい方でやりたいと思いました」

-予想と違う部分は

「実は、もっと孤立すると思っていました(笑い)。マイナーは自分勝手な選手が多いと思ってましたけど、みんな気さくに、僕が英語を分からなくても簡単な言葉で話しかけてくれたり、コミュニケーションを取ってくれたりするので、逆にいいイメージになりました。僕もマイナーでは自分のために…と思ってましたけど、みんなと一緒にやりたい、みたいな気持ちが芽生えてきました。来る前は、自分のことだけやろうと思ってましたけど、一緒に上がって行けたらと思うようになりました」

-メジャーとの違い

「全部が全部でしょうけど、一番はメンタルだと思います。僕はまだ上で投げて抑えられるという自信がまったくないです。そう思っている時点で、上で投げる資格はないと思います。社会人時代はどんな相手でも何とも思わなかったですし、そう思わないとマウンドでは投げられないと思っていました。そういう意味で、僕はマイナーでも投げたことがないですし、これからどんどん投げていって、下から上がっていって、マイナーの選手をいい意味で見下せるようになって、メジャーでも抑えられると思えるようになったら、上がれるのかなと思っています。メジャーで長くやってる選手は、言葉は違えど、少なくとも同じような考えを持っているはずだと思います。投げさせてもらうだけで終わってしまうわけにはいかないですから」

-ダイヤモンドバックスには大エースのグリンキー(35)がいる

「試合も見ましたし、映像もよく見てます。どちらかといえば、僕も同じようなタイプで球種も似てますから。体は大きくないのにすごいです。できれば、僕がメジャーに上がるまで(現役で)いてほしいです。でも、グリンキーがいなくなったら、僕も上がりやすいですかね(笑い)」

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冷静かつ客観的で、強い意志の持ち主。そんな印象でしょうか。

今季の吉川は2Aからのスタートになりそうですが、近い将来、メジャーのマウンドに立つ日が、今から楽しみです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)