野球の華はパワーとスピード。今季は、メジャーリーグ史上初の「50本塁打&100盗塁」コンビ誕生への期待がかかります。

ドジャース大谷翔平投手がホームランと同じペースで盗塁し、過去にメジャーで5人しかいない「40-40クラブ」(40本塁打&40盗塁)入りを予感させる活躍を見せています。その一方で大谷との「超人スピードスター対決」で注目されたレッズのエリー・デラクルス遊撃手が、16日に大谷との直接対決で早くも両リーグ独走の30盗塁に到達。驚異のシーズン100盗塁ペースで走りまくり、大きな話題となっています。

1900年以降の近代野球史上で、年間100盗塁以上した選手は4人しかいません。古くは1962年、当時ドジャースの韋駄天(いだてん)モーリー・ウイルスが史上初の大台突破となる104盗塁をマーク。その年に開場した本拠地ドジャースタジアムの特性を生かした機動力野球、いわゆる「ゴーゴー・ベースボール」を開花させました。

74年には当時カージナルスの1番打者ルー・ブロックが新記録の118盗塁をマーク。本拠地ブッシュメモリアルスタジアムでブロックが出塁すると、場内には映画「黒いジャガー」のテーマ、アイザック・ヘイズの楽曲が流れ、そのイントロからジワジワと高揚させられました。

82年は、当時アスレチックスで後に「世界の盗塁王」となる史上最高のリードオフマン、リッキー・ヘンダーソンが130盗塁を記録。85~87年には機動力野球で一世を風靡(ふうび)した、カージナルスのビンス・コールマンが3年連続で100盗塁以上を達成しました。

このように60~80年代のメジャーは、プロフットボールとの兼用で外野が広く、人工芝の円形スタジアムが大流行。その特性を生かすため、多くのチームがスピード重視の野球に方針転換していました。逆に、ホームランが少ない時代でした。

しかし、90年代以降、全米各地に野球専用球場ができると、やがて球界にステロイド(筋肉増強剤)もまん延しホームラン時代が到来。2001年にジャイアンツのバリー・ボンズが新記録の73本塁打を放つ一方で、盗塁がないがしろにされ、「失われた芸術」と呼ばれるようになりました。

そこで昨年、メジャーは本塁を除く各塁のベース拡大と投手のけん制球制限という新ルールを導入しました。すると、前年の合計2486個から00年以降最多の3503個と盗塁数が急増。ブレーブスのロナルド・アクーニャが史上初の「40本塁打&70盗塁」を達成しました。

今シーズンはさらに盗塁数が増加し、大谷の「40-40」やデラクルスの37年ぶり100盗塁なるか、などが注目されています。そして、最も注目したいのが大谷の50本塁打とデラクルスの100盗塁。すなわち、史上初の1シーズン50本塁打と100盗塁達成なるかです。

やはり、最大の楽しみは野球の2大要素であるパワーとスピード。1シーズンに50本塁打以上のホームランバッターと100盗塁以上のスピードスターが同時に生まれたら、その2つが絶妙にブレンドされた最高に面白い野球になると思います。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

二塁上でレッズ・デラクルスと言葉を交わすドジャース大谷翔平(2024年5月撮影)
二塁上でレッズ・デラクルスと言葉を交わすドジャース大谷翔平(2024年5月撮影)