ダル、よもやの2回途中KO-。ワールドシリーズ(WS)第3戦が行われ、ドジャースがアストロズに敗れ、対戦成績はド軍の1勝2敗となった。WS初先発のダルビッシュ有投手(31)が、序盤に4失点し、2回持たずに降板した。2番手で救援した前田健太投手(29)は2回2/3を1安打無失点と好投したものの、勝利には結びつかなかった。

 敵地がヒートアップする中、ダルビッシュは表情を変えることなく、ベンチへ向かった。メジャー最短となる、わずか「5アウト」でのKO。「チームにこれ以上ダメージがないようにということで、仕方ないことだと思います」。

 1回裏無死二塁のピンチは、無失点に切り抜けた。だが、2回裏、先頭グリエル(元DeNA)に左翼席へ弾丸ライナーの先制ソロを喫し、リズムが乱れた。四球を挟んで3連打、犠飛でさらに3失点。「スライダーが抜けて、速い球に合わされてしまった気がします」。2死二、三塁とピンチを広げ、試合が壊れそうになったところで、ロバーツ監督がたまらずマウンドへ向かった。

 その一方で、緊急救援となった前田は、鬼気迫る投球で試合を立て直した。「急きょ…。今回は急な感じでした」。だが、ダルビッシュが残した走者をかえすわけにはいかない。スイッチはすぐに入った。4番コレアを右飛に仕留め、ピンチを脱すると、5回裏1死まで4イニングの「またぎ」で無失点。ア軍打線の勢いを食い止めた。

 不慣れな救援ながら、今PSでは登板した全7試合連続無失点。計9回を2安打1四球9奪三振の快投で二塁すら踏ませていない。「一生懸命投げているだけ。とにかくチームの勝利のために、ワールドチャンピオンになるために投げているのがいい結果につながっていると思います」。

 順調に勝ち上がってきたド軍が、今PSで初めて連敗を喫し、初めて黒星が先行した。それでも、ロバーツ監督は淡々と言った。「正直なところ、我々に重圧は見当たらない。クリーンな試合をやるだけだ」。29年ぶりの世界一が、簡単につかめるはずもない。【四竈衛】

<グリエルの問題行動>

 先制弾のアストロズ・グリエルがアジア人への差別的ジェスチャーを行った。本塁打の後、ベンチへ戻ると両手で目尻を引っ張り、目を細めるポーズ。これがテレビに映し出され、大リーグ機構も事情聴取することになった。

 「誰かを傷つけるつもりはなかった。日本でプレーしていたし、日本人には多大な敬意を持っている。球界全体と、気分を害した人々に謝罪したい」というグリエルに対し、ダルビッシュは大人の対応。「いろんな人種を区別するようなことは、もちろん良くない。ただ完全な人間はいない。彼の中で1つのミスであって、人類として前に行くステップにできれば、ただのミスで終わらないと思います」と話した。ワールドシリーズ中にも処分が下る可能性がある。

 ▼ダルビッシュがワールドシリーズ初登板。日本人投手の同シリーズ登板は通算6人目。敗戦投手は初めて。先発したのは07年松坂(レッドソックス)がロッキーズとの第3戦で5回1/3、2失点で勝利投手になって以来10年ぶり2人目。

 ▼ダルビッシュが1回2/3で降板。先発では日本ハム時代の06年7月29日ソフトバンク戦(2安打3四球、3失点)に並ぶプロ最短降板となった。日本人先発投手がポストシーズンで2回持たなかったのは、09年黒田(ドジャース)がフィリーズとのリーグ優勝決定戦で1回1/3、6安打、6失点で降板して以来2度目。