ヤンキース田中将大投手(29)が28日(日本時間29日)、エンゼルス戦に先発し、6回2安打1失点9奪三振の力投で今季4勝目(2敗)を挙げた。エンゼルス大谷翔平投手(23)との注目対決こそ実現しなかったものの、卓越した投球術を披露。先輩メジャーとしての貫禄を見せた。メジャーでも戦った小宮山悟氏が投球を見つめた。

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 田中の投球は「お見事」のひと言で、大谷との対戦がお預けとなったファンも満足したのではないか。

 メジャー5年目の成熟した姿を存分に披露した。大量得点をもらってのマウンドは、不安定な姿を見せれば自軍に悪影響を及ぼすため、逆にプレッシャーがかかるものだ。田中は得点差を自身の余裕に変え、力むことなくエ軍を封じた。外角が非常に辛かった球審の判定を意に介さない辛抱強さで、強打の相手も面食らう制球力を発揮し、9個の三振を奪った。

 両コーナー低めに散らすスライダーの軌道、スプリットをワンバウンドさせるポイント。ボールが暴れることなく、すべてイメージ通りだった。一方で、3000本安打の迫る4番プホルスに対し、4回の第2打席では低めに力強く伸びる直球で見逃し三振を奪った。ボールを意のままに操る投手を「コマンドピッチャー」と呼ぶが、今の田中はここに分類される域にある。ここぞの局面でのぞかせるパワーも健在で、しかもフォームが日本時代より洗練されている。力感なく強いボールを放る、最大の特徴を手中にしている。

 思うようにいかない時期も反省を忘れず、コンスタントに投げ続ける中で進歩を続け、剛と柔を高いレベルで両立させた。昨秋ポストシーズンでの快投も上積みとするはずで、田中の今季はかなり期待できる。最高の形で8連勝を決めたヤ軍は、首位を走るライバル・レッドソックスを追撃できる状態にある。(日刊スポーツ評論家)