【サプライズ(米アリゾナ州)5日(日本時間6日)=斎藤庸裕】今年も頼もしい。ダイヤモンドバックス平野佳寿投手(34)がロイヤルズとのオープン戦に今季初登板し、1イニングを無安打無失点に抑えた。生命線の制球力を駆使し、わずか7球、打者3人を約3分であっさり料理。原点の外角低めを徹底した。昨季は75試合の登板で4勝3敗、防御率2・44。今季は守護神候補でもあり、2年目のさらなる飛躍に期待がかかる。

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たった7球でも、そこに平野の流儀が詰まっていた。捕手のミットをめがけ、ひたすら低めに投げ続け、思惑通りに打者の芯を外した。遊ゴロ2本に三邪飛で、打者を手玉にとった3分クッキング。2年目の風格すら漂うマウンドさばきだったが「そう見えるのはありがたいですけど、顔(のせい)とかじゃないですか。よく言われます」と淡々。実際には「ドキドキしてますよ」と心臓の鼓動は高鳴っていた。

日米通算で624試合に登板。メジャー1年目の昨季は75試合に登板し、防御率2・44。場数を踏んできたが、今でも緊張は「します」と即答。さらに「練習試合でも緊張しますし、今日でもします。こういう試合で緊張しなくなったらもう、どうかなと思っている。辞め時かな」と言った。この緊張感を失えばプロとして失格。淡々として見えるのとは裏腹に「いつまでたっても、緊張している方が自分ではいい」と初心を忘れていない。

緊張感は初球に表れていた。「力んで、すっぽ抜けた」と90マイル(約144・8キロ)の直球が珍しく高めに大きく外れた。直後に修正し、2球目は外角ギリギリ、低めいっぱいに収めた。「相手も直球を狙ってきている。だから低めにしっかり投げて、タイミングがずれれば、ゴロになりやすい」。球速ではなく、外角、内角低めの制球力こそ生きる道と信じ「そこが一番」と愚直にスタイルを貫き、メジャーの守護神候補となるまで地位を高めた。

現状維持のつもりはない。練習中のカーブについては「タイミングが外れているなという感覚はあるので、面白いかな」と手応えも得た。オープン戦、打者の反応や球種の精度を試す期間でもあるが、たった7球で終わった。それでも「3球で終われば一番うれしい」。低めに集めて、打たせてとる。日本人らしさを極める挑戦が続く。

◆ダイヤモンドバックスの守護神候補

ブラッドリー、平野、ホランドの3選手による争いとなる。ブラッドリーは昨年、平野と同様セットアッパーとして76試合に登板し、4勝5敗、防御率3・64。直球の球速は平均で約155キロと球威があり、ナックルカーブとスライダーを操る。ホランドはナ・リーグの17年セーブ王で実績があり、昨季は56試合の登板で2勝2敗3セーブ、防御率4・66。直球の平均球速は150キロ前後で、スライダー、チェンジアップ、カーブを持ち球とする。

ロブロ監督はこの日、リリーフで登板したブラッドリー(1回1安打無失点)と平野について、「2人とも素晴らしいボールを投げていた」と高く評価。守護神については「3人の争いになる」と明言はしなかった。ただ、終盤の3回を3選手に任せる方針で、同監督は「ヨシ(平野)は3イニングのうち、いずれかのポジションを任せる」と話した。