【メサ(米アリゾナ州)5日(日本時間6日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(26)が、今季オープン戦初先発で復活を印象づけた。敵地アスレチックス戦で1回2/3を3安打1失点。球団によれば、トラックマンの計測で最速100マイル(約161キロ)をマークした。2四球を与えたが、持ち味の直球とスプリットで5奪三振。マウンド上で苦しんでいた昨季と比べ、「心・技・体」で安定した姿を披露した。再び二刀流で挑むメジャー4年目。投打で好スタートを切った。

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41球、大谷は力を振り絞ることなく腕を振った。「最初の実戦だったので、全体的に抑え気味にいこうという感じだった」。それでも直球が走り、球威もあった。1回1死二塁。3番オルソンへの6球目、最速100マイル(約161キロ)の直球で空振り三振を奪った。力を制御しつつ「決めにいった球なのかなという感じ」。あっさり、100マイルの大台をマークした。

1998人のファンを前に、心の余裕があった。「すごく楽しかった」。1回の投球を終えると三塁ベース付近から敵軍の選手に声をかけられ、明るく応答。2回には、9番打者への投球中にふと、笑顔を見せた。昨年7月26日。同じ相手に対しての投手復帰戦ではマウンド上で首をかしげ、口を真一文字にし、表情も硬かった。「(左膝の)リハビリメニューもあって、ちょっと楽しむ余裕はなかった」。昨年とは違い、この日の登板では表情豊かにマウンドで躍動した。

技術も改善した。コンパクトな腕の振りを意識した昨季は上半身と下半身が連動せず、フォームに安定感がなかった。昨オフから「低出力でも、いいボールがいく感覚」をテーマに取り組み、今キャンプで固まりつつある。1回の先頭打者キャンハに対しては外角直球で見逃し三振。「比較的真っすぐも良かったですし、スプリットは特に変化が良かったので、そこが一番」。低出力で走る直球の制球が安定したことで、落差のあるスプリットの効果も抜群。直球で2三振、スプリットで3三振を奪った。

マウンド上では一回り大きくなった体も目立った。体重102キロで上半身と下半身ともに厚みが増し、19年に手術した左膝の不安もない。右肘を手術した18年と比べても、状態は「術後から良くなっているというのは確実に言えることなので」と力強く話した。

スライダーの精度や、力んで引っかける直球には課題が残った。「実戦でしかできないことをフォーカスしてやっていければ。球速は必然的に上がってくるものかなと思うので、結果的にそれを目安に考えればいい」。2日前のレンジャーズ戦では打者として約143メートルの特大弾を放ち、この日は“控えめ”ながら161キロをマークした。オープン戦とはいえ、潜在能力はやはり、計り知れない。

▼20年7月26日 アスレチックス戦VTR 先頭打者に2球目の直球を捉えられ、中前打を浴びた。次打者から制球が定まらず、3連続四球で押し出し。その後も立ち直れず、連打で1死もとれずに3失点で降板。693日ぶりの復帰戦は直球16球のうち、ストライクはわずか5球だった。この日のオープン戦初戦では直球19球のうち10球がストライク。制球が改善され、球威も増した。