【ニューヨーク9日(日本時間10日)=大塚仁】レッドソックス田沢純一投手(23)が“救世主”に指名された。フランコナ監督はヤンキース戦前、11日(同12日)のタイガース戦(ボストン)に田沢を先発させると明かした。松坂ら故障者が多く、先発不足を救う存在として抜てきした。この日もヤンキースに敗れ6連敗、不振は深刻なだけに期待は高まる。7日にメジャー昇格即初登板を果たしたばかりのルーキーに、早くもビッグチャンスがやってきた。

 フランコナ監督の口調は明快だった。試合前の会見で、11日の先発投手を問われると「タザワ」と即答した。「彼はまだそれほどリリーフで投げていない。もっと多く投げていたら、この決断はしていないだろう。ほかの投手も候補には挙がったが、彼を起用することで柔軟性が生まれる」。まだ消耗していない田沢は無限の可能性を秘める。今後への期待とともに白羽の矢が立てられた。

 ファレル投手コーチから先発を伝えられた田沢は緊張しながらも「力をすべて使って頑張りたい。しっかり準備して臨めたらいい」と意気込んだ。7日のメジャー初登板から中3日での先発。ブルペンでの投球練習はせずに調整するよう命じられたため、外野で捕手を座らせて30球程度の投球練習を行った。

 チームは逆転負けで6連敗を喫し、首位ヤンキースに6・5ゲーム差。松坂、ウェークフィールドが故障者リスト入りし、スモルツを戦力外としたチーム事情もあって、苦境を乗り切るための策。英才教育の途中にいる田沢にとっては、ベケット、レスターらに続く投手に成長するための貴重な経験になる。

 好投しても、ウェークフィールドが復帰すれば再びマイナー降格となる可能性もある。だが早くも訪れたメジャー初先発が、今後へのビッグチャンス。「前回は気持ちが高ぶりすぎていたのかなというのもあるので、もう少し落ち着いて投げられたらいい。チャンスをもらえたというのは感じる。チーム状況もあるので、何とか自分が力になりたい」。田沢のシンデレラストーリーが新たな章に突入した。