<タイガース1-3レイズ>◇29日(日本時間30日)◇コメリカパーク

 【デトロイト(米ミシガン州)=千葉修宏】レイズ岩村明憲内野手(30)が、ついにフィールドに帰ってきた。左ひざ前十字靱帯(じんたい)断裂から約3カ月、奇跡的な回復で60日間の故障者リスト(DL)から戦列復帰した。タイガース戦に「9番二塁」で先発出場し、3回の復帰最初の打席で右前打を放ち、本塁も2度踏んで勝利に貢献した。逆転プレーオフへ欠かせない、攻守の要が存在感を見せつけた。

 3回、先頭打者として回ってきた久々のメジャーの打席。岩村は、左腕ロバートソンが投じた2球目、やや内寄りの89マイル(約143キロ)直球をフルスイングした。ブランクを感じさせない鋭いライナーを右前へ飛ばした。

 「泣きそうになった…」。相手走者と二塁で交錯し、左ひざ前十字靱帯、同内側側副靱帯、左足首の三角靱帯を痛めた5月24日のマーリンズ戦。あの時の3安打以来となる確かな感触が両手に残り、サングラスの下は涙をこらえるので必死だった。

 驚異的な回復と言ってしまえば簡単だが、実際は困難が目の前に立ちはだかっていた。リハビリ中の精神的ストレスは想像を超えていた。そんな岩村を支えたのが家族の存在。岩村は開口一番、「一番迷惑をかけたのは家族だと思う。ストレスがたまって…。(家族に)当たっているわけじゃないんだけど、いろんな意味で迷惑をかけた。ただ、あのリハビリ生活があったから、かけがえのない時間を過ごすことができた」と感謝の言葉を口にした。

 この日の午前、調整を行っていた傘下3Aダーラムの遠征地、バージニア州ノーフォークから、空路デトロイト入りした。岩村が監督室でマドン監督にかけられた言葉が「準備はいいか?」だった。即二塁スタメン出場の打診。ア・リーグのワイルドカード争いでレッドソックスを4・5差で追うチームには、攻守の要が必要だった。

 岩村はこの日、2打数1安打2四球2得点と期待に応えた。「勝っても負けても試合ができたことが、言葉にならないくらい自分にとってすごくプラス。その上、2回ホームベースを踏んで勝利に貢献できたのがすごく大きかった」。マドン監督も「バットが振れていたし、よく走れていた。朝、アキと話をした時に、すごく自信に満ちていた。精神的な影響はなさそうだ」と喜んだ。

 選手生命にかかわるケガの後だけに、今後の起用法も慎重にならざるを得ない。それでも昨年、チームをリーグ優勝へ導いた男は「監督とトレーナーと、それからひざと相談しながら出場が決まっていくというのはありますが、自分の気持ちとしては毎日出るように準備はしたい」と言い切った。