<ロッキーズ13-4カブス>◇6日(日本時間7日)◇クアーズフィールド

 【デンバー(米コロラド州)=佐藤直子通信員】カブス藤川球児投手(34)が437日ぶりにメジャーのマウンドに戻った。昨年5月26日レッズ戦で右肘靱帯(じんたい)を損傷。同6月11日に靱帯再建手術を受けた後、キャンプ地アリゾナで1年以上のリハビリ生活を送った。故障者リスト(DL)から復帰し即登板。最速92マイル(約148キロ)を計測し、1回無失点の堂々たる投球を披露した。

 1点リードの6回。ブルペン待機していた藤川は、椅子から立ち上がり体を動かし始めた。先発アリエッタが同点に追いつかれ、さらに勝ち越しを許した時、ブルペンの電話が鳴った。コーチに声を掛けられた藤川は、予想的中とばかりに肩を作り始めた。

 「最悪のことを考えて構えるのがリリーフ。(展開が)いい状態じゃない時に出るのは分かっている」

 7連打で4点を勝ち越され、なおも無死一、二塁の場面で出番が巡ってきた。「いろんな感情が出てきたら邪魔」と感情は一切排除し、自分のやるべき仕事に集中した。

 先頭ブラックマンにカウント1-2から死球を与えて無死満塁。次打者ラトレッジをフォークで二ゴロ併殺とする間に三塁走者をかえしたが、最後は3安打と当たっていたモーノーを同じくフォークで左飛に仕留めた。わずか10球で3死を奪ってベンチへ向かうと、最初に出迎えた和田とグータッチした。

 試合後、メジャー復帰の感慨を問われ「ないです。まったくないですね」と笑い飛ばした。苦労をかみしめるのは、引退後に自分が歩んだ野球人生を振り返る時で遅くない。野球人生の真っただ中にある今、一番大切なのは「試合で投げたら結果を出しにいく」ということだけ。そのためには速球で押していくだけではなかった。「自分のパフォーマンスはまだ我慢」。自分のやれることを見極めながら勝負するため、最善の努力を尽くしていくつもりだ。

 マウンドからの景色をもう1度見る。それを復帰時の楽しみにしてきた。だが、この日の景色を聞かれると「無死一、二塁のマウンドではなかったですね、見たい景色は」と苦笑いしながら、こう続けた。

 「でも、今日あのマウンドを迎えた時、1つ言えるのは(復帰までの道のりは)思ったほど大変ではなかったと、人生にはもっと大変なことがあるって感じましたね」

 1年2カ月のリハビリ期間を経て、強心臓にさらに磨きが掛かったようだ。藤川のメジャー第2幕が始まった。