WBC世界バンタム級王者井上拓真(30=大橋)が注目のリマッチを制し、2度目の防衛に成功した。挑戦者の同級1位那須川天心(28=帝拳)との約10カ月ぶりの再戦に臨み、7回にダウンを喫したが、3-0の判定勝ち。
初対決となった昨年11月の同級王座決定戦では那須川にキャリア初黒星をつける判定勝利。2度目対決でも返り討ちしてみせた。
リング上での勝利者インタビューでは「天心選手、やっぱりその強いです。左ストレート1発でダウンくらったし、成長しているなと思った。だから自分の気合がはいって返り討ちすることができた」と口にした。
井上の胸には「危機感」が刻まれている。24年10月、同学年の堤聖也(角海老宝石)に判定負けを喫し、WBA同級王座から陥落した。「自信過剰」「慢心」による調整段階の隙はなかったのかを見直した。不完全燃焼で負ける悔しさも味わった。井上は「堤戦で負けて、全部、思い知っている。自信過剰とか、そんなことでつまずいている暇はない」と自覚していた。
那須川との初対決後、区切りの30歳を迎えたことも大きい。プロデビューから13年が経過。9度目の世界戦だった。「年齢も30歳で負けて『また頑張る』というのは…。本当に世界王者である以上、失うものもでかい」と緊張感を持続。4団体統一スーパーバンタム級王者の兄尚弥(33=大橋)は次戦未定ながら、8月中旬の北海道・夕張合宿からジムワークと時間の許す限り、トレーニングに付き合ってくれた。井上は「メンタルサポートというか、本当に一緒に追い込んでやってくれている。この試合に向け、気持ちは一緒に向かっていると。一緒に練習するのは心強いですし、力になる」と強調。兄弟世界王者の結束も力に変え、那須川戦の準備をしていた。
今年5月には元世界4階級制覇王者井岡一翔(志成)から2度のダウンを奪って判定勝利。「尚弥の弟」ではなく、井上拓真としての存在感が一気に増した。しかし井上の気持ちは常に瀬戸際に立たされている。「いつも崖っぷちのイメージでやっている」と注目リマッチのリングに立った。
那須川に2連勝、井岡撃破と日本人のビッグネームに3連勝。WBCから義務づけられる指名試合なども控えているが、来年は他団体との王座統一戦を希望している。
「自分はまだまだベルトを増やして、本当に目標とする兄の背中を追いかけて突っ走っていきたいと思います」
勝利したからこそみえる新しい「景色」がある。「井上拓真のボクシングは打たせずに打つ。それは、まだ完成していない。伸びしろはあると思っている。まだまだ成長している」。日本勢に実力者がそろうホットなバンタム級で、井上がスーパーチャンピオンへの道を突き進む。
■ラウンドVTR■
1回 互いに見合う慎重な立ち上がり。井上が先に右を伸ばしたが、その後は再び試合は硬直状態。那須川は内側から軽いジャブを出して様子をうかがい、終盤には井上が右アッパーを繰り出した。日刊採点は井上の10-9
2回 2回に入ると、両者が手数を増やして試合が動き出す。那須川は終盤に左ストレートを当て、続けてタイミング良く左フックを放つ。井上がスリップした後は距離が近づき、互いに打ち合ってゴングを聞いた。日刊採点は井上9-10
3回 序盤から互いに圧力をかけ、ジャブを使って間合いを探る。井上がスピードのあるボディーストレートを放ち、両者がワンツーを出し合った。前回の対戦と同じく、前半戦は互いの出方を読み合う展開が続いた。日刊採点は井上の10-9
4回 那須川がいきなり飛び込んで主導権を握ろうとするが、井上も冷静に対応する。那須川は素早い動きからの攻撃に加え、大きく振りかぶって打つなど緩急をつけた。終盤には井上の左フックが那須川をかすめ、那須川が体勢を崩した。日刊採点は井上の10-9
5回 5回を前に公開採点が発表され、4回までの採点は井上から見て38-38、40-36、39-37。2者が井上のリードとした。井上は序盤から攻撃を繰り出して流れをつかむ。残り1分にはワンツーからアッパーを当て、優位に進めた。那須川も前に出たが、井上の攻撃を受ける場面が目立った。日刊採点は井上の10-9
6回 6回も井上のペース。那須川はなかなか間合いに入れず、強引にパンチを振る場面が目立つ。井上はクリンチも使って那須川の攻撃をしのいだ。手数では那須川が上回ったものの、決定打を当てられないままゴングを聞いた。日刊採点は井上の10-9
7回 立ち上がりから距離を縮めて打ち合う中、那須川の左ストレートが決まり、井上がダウン。那須川は立ち上がった井上のボディーを攻め、ロープ際に追い込んだ。井上は「来い来い」と挑発しながらカウンターを狙う。那須川は終盤にも左で井上の顔面を捉え、後退させた。日刊採点は井上の8-10
8回 7回にダウンを喫した井上が、果敢に前に出て攻め込む。那須川の打ち終わりを狙ってパンチを繰り出した。那須川もジャブでペースを握ろうとしたが、終盤に井上の右ストレートを被弾。最後は接近戦となった。日刊採点は井上の10-9
9回 8回までの公開採点は井上から見て75-76、77-74、77-74。2者が井上を支持した。井上は立ち上がりから攻め込み、ジャブからボディーにつなげる。那須川も攻撃をかわして応戦。終盤は互いに速い連打を繰り出した。日刊採点は井上の10-9
10回 ポイントで追う那須川は前に出て攻めるが、井上はロープを背負ってもクリンチを使って攻撃をしのぐ。距離ができると、離れ際に右を的確に当てた。那須川は攻め続けたものの、井上が防御とカウンターで上回った。日刊採点は井上の10-9
11回 那須川が攻め込むが、井上は冷静に対応。中盤に左フックを当てると、右アッパー、左と続けて顔面を捉えた。那須川は倒れずに応戦。左フックを当てて圧力をかけ、終盤にはロープ際に追い込んだが、パンチは当てれなかった。日刊採点は井上の10-9
12回 井上は那須川の攻撃を見極めながら対応する。中盤には両者がノーガードで打ち合う場面もあったが、井上は足を使って距離を取った。那須川はボディーアッパーを繰り出すものの、決定打にはつながらない。井上は右眉付近をカット。残り10秒は激しく打ち合い、ゴングを聞いた。日刊採点は井上の10-9

