3勝2敗で6番相撲を迎えた西幕下13枚目の豊ノ島(34=時津風)が、同11枚目の貴公俊(20=貴乃花)を押し出しで破り、勝ち越しを決めた。

 今場所は1番相撲が白星と黒星が交互に続いていたが、そんな負の規則性? を打破し、王手から一発で勝ち越しを決めた。

 「後半になるにつれて相撲内容が良くなっている」と、ここまでの今場所を振り返るような会心の相撲だった。立ち合いは、やや圧力負けしたが、差し手争いで左をしぼりながらこじ入れ、右はおっつけながら前進。最後は左腕を相手のノド元に当てながらグイと伸ばし、押し出した。

 これで3場所連続の勝ち越し。三役常連のベテランからすれば、この位置での勝ち越しは当然のこと。それでも「そんなこと(勝ち越し決定)よりホッとひと息。ホッとしすぎて熱が出そう。頭が痛いですね」と安堵(あんど)感を口にした。

 手放しで喜べないプライドと、追い込まれた中での達成感が、ない交ぜになっている。「何せここで負け越したら、ある程度、覚悟しなければいけない。(幕下陥落から)時間がかかっているし、崖っぷちというのがある。自分の中で本当に後がないという気持ちでやっているから、緊張しますよ」。そんな言葉で、胸にしまった「引退」の2文字と闘う心境を吐露した。残り1番。来場所、幕下1桁以内を確実にするためにも、白星で1年納めの場所を締めくくりたい。