静岡・焼津港中で昨夏の全国中学校相撲選手権個人、団体2冠に輝いた東序ノ口14枚目の吉井(15=中川)が、序ノ口デビュー場所を5勝2敗で乗り切った。25日の7番相撲は、同東10枚目で小兵の柏葉(伊勢ノ海)との取組。立ち合いで潜り込まれそうになったが、冷静に左を差して頭を押さえながら、肩透かしで勝負を決めた。

「勝ち越しが決まっていたので、緊張することなく、思い切ってやれました」

序ノ口とはいえ、レベルの高さを感じた場所だった。大学、高校出身力士も名を連ね、5番相撲では、東農大出身の時栄に屈した。師匠の中川親方(元前頭旭里)からも「まだ15歳。体力差はあるから、今場所は4番勝てばいい」と言われていたが、本人は「中学を出てすぐに入った以上、年齢差は関係なくやっていくだけです」。その上で「疲れはしましたが、食事も睡眠も十分で体重(150キロ)が減ることはありませんでした」と充実した表情で振り返った。

頑張れる要因には、福山雅治(50)の存在もあった。今場所前、東京・蒲田在住の後援者から「今、福山さんがドラマ『集団左遷』のロケをしているから」と声を掛けられ、稽古後に出向くと、偶然にエレベーターで一緒になった。実は母親が福山の大ファン。吉井の名前、虹(こう)は、母が福山の楽曲「虹」から命名したほどだが、吉井は緊張で福山にそれを説明できなかった。千載一遇のチャンスを逃す形に…。しかし、5月18日放送の東京FM「福のラジオ」で、パーソナリティーの福山自身がこう明かした。

「中川部屋の序ノ口吉井が2連勝。吉井くんの名前は、虹と書いて『こう』。お母さまが私のファンだそうで、ありがとうございます。で、03年リリースの『虹』から命名されたそうですが、何と吉井くんが、『集団左遷』の現場にいて、一緒のエレベーターに乗っていたらしいんですよ。俺が支度場でメークと衣装替えを終えて、4階か3階かでエレベーターに乗ったら、2階で止まるとそこに力士がいたんです。その人が吉井虹くんだったんです。俺が『大きいね~。体重何キロ?』と聞くと、『150キロです』と答えるので、『大人2人分だね』と返しました。そうこうするうちに、エレベーターが開いたわけですが、もう、言いなよ~。『吉井です。吉井虹です』って。その話を聞いて驚いたのは、私ですよ。ということで、頑張ってね。頑張って君の虹つかんでください」

吉井は、放送を聴いて驚いた母から連絡を受けて声を弾ませた。

「もう、夢のようでした。憧れてきた福山さんが、僕のことを知っていて、ラジオで話してくださるなんて…。母も大喜びでした」

とはいえ、相撲人生は始まったばかり。この喜びを福山に直接伝える立場ではなく、再会するためには番付を上げて、その機会をうかがうしかない。

「母には今回のことで、少しの恩返しをできた気がしますが、まだ福山さんに会わしてあげられていないので、その夢が果たせるぐらいに力をつけていきたいです」

吉井はそんな虹をつかむべく、前に進む。【柳田通斉】