大関照ノ富士の横綱昇進が決まった。26場所ぶりに誕生する横綱は、いかなる復活劇を遂げたのか。連載「第73代横綱誕生~不屈の照ノ富士~」で答えに迫る。

   ◇   ◇   ◇

かつての強引な取り口は、劇的に改善されている。幕内に復帰した昨年7月場所以降、左前みつを素早く取って強烈に引きつける相撲が、照ノ富士の躍進を支えている。元横綱千代の富士や、兄弟子の元横綱日馬富士らを参考にしているという形。大関昇進の伝達式で照ノ富士は「自分は1つのことしかできない。右四つで前に出てやっていくという形を、もっともっと強くしていきたいなと思います」と話していたが、言葉通り絶対的な攻めとなりつつある。

鳥取城北高で照ノ富士を指導した同校相撲部コーチのレンツェンドルジ・ガントゥクス氏(36)は「昔は引っ張り込む相撲が多かったけど、今は前に出ることだけに集中しているように見える」と変化を口にする。師匠の伊勢ケ浜親方は「抱え込んで相撲を取ったり、強引な投げを打ったり、反り返ったり、そういうのはなくなってきている。やっぱり前に出なければ相撲は取れないですよね。膝が悪い力士は」と説明。古傷の両膝の状態が悪いからこそ、前傾姿勢を維持して膝に負担がかからない取り口を意識してきた。

現行のかど番制度となった69年名古屋場所以降、大関陥落を経験して横綱昇進を果たしたのは三重ノ海だけ。その元横綱三重ノ海の石山五郎氏(73)は「今の前に出る相撲を貫けばいい。照ノ富士の大きな体を生かした相撲だと思う」と太鼓判を押す。192センチ、177キロの体を存分に生かして、最高位を務める。【佐藤礼征】