「チーム」と「クラブ」は異なるのだが、日本ではその違いが理解されていない。「チーム」は、戦う集団。監督が頂点にいてピラミッド型に選手たちがいる。目的は勝利で、監督のリーダーシップに支配される。すべての責任は、監督1人にあって、そこには民主主義は存在しない。軍隊と同じだと考えてよい。

他方、「クラブ」は、仲間たちが集まって何かを楽しむ集団を意味する。民主的に運営され、その集団には自治がある。メンバーは平等で同列に扱われる。私はニューヨーク・アスレチック・クラブ(NYAC)に所属したことがあるが、正式メンバーにはなれなかった。全米チャンピオンになっても客員メンバー。

NYACは、1800年代に創設された米国最古のクラブで、第1回全米陸上選手権大会を主催した。このクラブの会則に「メンバーは白人に限る」とあり、黄色の日本人は客員メンバー。人種差別の臭いがプンプンするが「クラブ」の自治、会員でルールを定める。

米国の水泳選手に黒人が少ないのは、スイミングクラブは黒人や有色人種を制限しているからだという。プライベートのクラブの自治は強烈で、法の介入を許さない。ただ、プライベートのクラブに限られるとはいえ、米社会に残る差別の構造を見た思いがした。

日本人は「チーム」と「クラブ」をときに混同する。大学では体育会所属の部はチーム、同好会がクラブという色分けが一般的だ。大きなクラブがチームを持ち、勝負を楽しむ欧州型。サッカーのチームが、その好例であろう。

NYACは、マンハッタンのセントラルパークに面した一等地にある。ビルの中には体育館やプール、レスリング場があって、会員たちが楽しんでいた。バーにレストラン、サウナ風呂も完備されていた。会員制とはいえ、男の白人社会の社交場だった。私はNYACをモデルにホテルニューオータニの中にゴールデンスパ・ニューオータニを1973年に作った。もちろん高級の会員制だった。