一力ボクシングジムに所属する近藤明広(35=写真右)は、初代WBOスーパーライト級アジアパシフィックチャンピオンになった実績を持つ現役プロボクサーだ。中学3年生の時にテレビに映った畑山隆則の試合に衝撃を受け、ボクシングをスタート。片道2時間弱かけて地元埼玉県加須市から白鴎大足利(栃木)に通い、血のにじむような努力で全国区の選手になった。

プロ転向後は、地味な勝ち方で周囲の期待を裏切り続けた。もやがかかったボクシング人生は、一夜で大きく変わった。「大番狂わせ」と呼ばれた2009年8月の日本ライト級タイトルマッチ。近藤が「2、3ランク格上で雲の上の存在」と語る、世界ランカーを1ラウンドTKO。瞬く間にスターダムを駆け上がった。

チャンピオンとなった近藤の周辺は大騒ぎ。「ちやほやされて気持ちが大きくなった」と、練習に集中出来ず、成績は急降下した。そんな時に支えになったのが東京、埼玉の支援者だった。「どんな時も信じて応援してくれた」と、当時を振り返る。感謝から地元加須への貢献活動を始め、08年に加須市の観光大使を任命された。

夢は支援者への恩返し。「年齢的にも崖っぷち。コロナの影響でさらに崖っぷち。チャンピオンになって支援者、ジム関係者に恩返しをしたい」と話す。新型コロナウイルスの影響で試合は延期中だが、秋の世界ランカー戦へ向けて体を追い込む日々が続く。「自称崖っぷちボクサー」の本気の挑戦が始まる。

[PR]